中小・零細事業者の力を結集

 答えは単純明快。その膨大な荷物量をさばけるだけの、強力な配送網を一気に築いてしまったのだ。自前でトラックを手配し、ドライバーを一から雇用したわけではない。同じように宅配事業への進出を考える既存の中小物流事業者を束ね、その力を結集させたのである。

協力会社のネットワークは1500社に
●アズコムネット会員企業数の推移
<span class="fontSizeM">協力会社のネットワークは1500社に</span><br /><span class="fontSizeS">●アズコムネット会員企業数の推移</span>
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 和佐見社長は、来るべき宅配分野への進出をにらみ、早い時期から協力会社のネットワークを強化し始めていた。15年には、協力会社の経営を支える団体「AZ-COM丸和・支援ネットワーク(アズコムネット)」を設け、会員139社でスタート。20年末には1500社まで増え、膨れ上がる荷物量をさばく原動力となっている。

 会員企業を募り荷物輸送を委託するこうした「協業ネットワーク」は、せっかく構築しても、その後、旗振り役が会員企業に仕事を回せなければ先細りは避けられないし、うまくいかなければ業界内での信用すら傷つきかねない。しかし“今回の商売相手”はあのアマゾン。仕事が回せなくなるなどという心配は一切不要だったのである。

<span class="fontBold">協業する運送会社が増えている(2019年のアズコムネット総会)</span>
協業する運送会社が増えている(2019年のアズコムネット総会)

 もっとも、アズコムネットの会員企業が順調に増えたのは、必ずしも丸和運輸がアマゾンと手を組んだからだけではない。

 アズコムネットは中小・零細の会員企業に「実利を提供した」(和佐見社長)。例えば費用面では、配送用車両のリース代やガソリン代の大口割引の恩恵を受けられる。教育も支援し、ドライバーには運転技術や車両点検の仕方を、管理者には労務管理について教えるなど、中小・零細企業の手が回らない部分を様々なアプローチでバックアップする。

 会員企業の一社、NTSロジ(東京都東久留米市)の笠原史久社長は「軽自動車による宅配を2台から始め、1年半で20台まで増やせたのは費用面などで支援を受けたことが一因」と話す。

 会員の希望を募り、アマゾンの米国の物流センターや米ナイキの欧州にあるセンターを見学するツアーも組む。手厚い支援によって「会員企業が、丸和と取引のない企業も誘って紹介してくれるようにもなった」と、アズコムネットの坂俊之理事は話す。

 一定の規模を持つ物流会社であれば協力会社をまとめる組織は持つものだが「会員を集めてゴルフ大会を開くといった親睦が目的となる場合が多い」(業界関係者)。和佐見社長はそれだけでは意味がないと考える。

 中堅物流の幹部は「荷物量が増えて対応できなくなったときに、協力会社に配送を丸投げするだけという例もある中で、丸和さんの取り組みは関係づくりの上で大きな意味を持つ」とみる。

<span class="fontBold">人材企業を辞め配送事業者として一念発起した尾木竜一郎さん</span>
人材企業を辞め配送事業者として一念発起した尾木竜一郎さん

 丸和運輸はこうして既存の物流事業者に結集を呼び掛ける一方で、「協力会社だけでは人と車両が足りなくなる」(岩﨑哲律取締役)と、協業するドライバーの養成にも乗り出している。

 17年から始めた、個人事業主として配送ビジネスを始めたい人材を支援・育成する仕組み「桃太郎・クイック エース(MQA)」がその母体だ。

 東京都練馬区で宅配ドライバーとして働いている尾木竜一郎さんも、MQAの仕組みから生まれた個人事業主の一人。19年8月、人材系の企業を辞めて一念発起した。「40歳を迎え、転職を視野に入れ始めたとき、個人事業主という働き方もありだと思って始めた」という。

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