時は15年。丸和運輸は東証1部へ指定替えとなり、経営は外からは順調に見えたものの、社内では危機感が漂っていた。「創業以来、倉庫から店舗に商品を届けるなどの企業間物流を得意としてきたが、果たしてそれだけで成長の持続が可能なのか」(藤田勉取締役)という懸念である。

 消費者の行動は、店舗を訪れて商品を買う形から、ECなどを通じて自宅に商品を届けてもらう方向にシフトしていた。店ではなく、個人宅へ商品を届ける宅配事業をより充実させなければじり貧になるとの認識が芽生えるのは当然と言える。

 ただ、宅配分野には当時既に、ヤマト運輸や佐川急便などの大手が強力な配送網を整備済み。何かきっかけがなければ突破口は開けない。

 そこで、和佐見勝社長らが打ち出した戦略が「成長著しいEC事業者や小売事業者と一緒になって、専用の物流網を新たに構築する」というものだった。このやり方なら、既存の大手事業者と顧客を奪い合わずに済む。

 「大手の物流網には集荷や全国の配送網を維持するコストがかかっている。人手不足の中で、いつか今の体制では御社の荷物をさばききれなくなる。そうなる前に自前の物流網を作りましょう」。そんなセールストークで、役員総出でパートナー探しに奔走した。

願ってもない“意中の相手”

 この戦略を有効なものにするには、パートナーとなるEC事業者や小売事業者はなるべく大手が望ましい。せっかく専用の物流網を整備しても取引額が少なければ、丸和運輸の宅配事業拡大も望めないからだ。こうしてひそかに和佐見社長らが定めた“意中の相手”がアマゾンだったようだ。

 中堅企業による世界最大EC企業へのアプローチ。しかし同社は無謀とは考えなかった。というのも、前述のように当時、アマゾンの配達業務の多くをヤマト運輸が担っていたが、物流業界関係者の間では既に両者の“破局”の噂が流れていたからだ。

 「ECの拡大によって荷物量が急増し、ヤマトも人手の確保が追い付かず苦しんでいる。このままではいずれ宅配網が破綻しかねない。そうなる前にアマゾンと縁を切るのではないか」──。そんな見方だ。

 そして17年、それは現実のものとなる。ヤマト運輸は法人顧客向け運賃の値上げに動き、アマゾンとの取引は大幅に縮小した。これに伴いアマゾンは従来の配送方法を改め、全国各地で配送会社「デリバリープロバイダー」を募り、主に当日配送向けの独自の宅配網を築くことに決めたのだ。

 ここで手を挙げずして、いつ手を挙げるのか──。同社が真っ先に名乗りを上げたのは言うまでもない。丸和運輸は一気に宅配事業を広げていく。

 とはいえ、この段階では配送網はまだ十分でなかった。ヤマト運輸でさえ音を上げた膨大な荷物量を、地域限定とはいえいかにしてさばいたのか。

EC関連事業が急成長を支える
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