桃屋が息を吹き返している。1980年代の3分の1程度まで落ち込んでいた売上高が反転し、7期連続で増収増益となった。4%だった営業利益率を9%に引き上げた原動力は営業だ。現場の抜本改革で定番の魅力をよみがえらせた。

「ごはんですよ!」など瓶詰め商品を展開し、めんつゆを浸透させたパイオニアでもある。近年は、しびれが特徴の食べる調味料「麻辣香油」(左下)がヒット。写真右は平田佳代氏(写真=的野 弘路)

 溶いた卵の次にご飯、そしてチャーシュー。桃屋で営業を担当する平田佳代氏は慣れた手つきでチャーハンを炒め始めた。味を調えるしょうゆや塩こしょうは使わない。看板商品の「ごはんですよ!」をスプーンですくうと、フライパンに放り込んだ。かつおやほたてのエキスが入っているため、これだけで味が決まるのだという。

 本社のキッチンで料理をしては、小売りや卸との商談に持参する。全国に散らばる約70人の営業担当の全員がこうして自ら調理する。料理を入れる容器やクーラーボックス、割り箸や取り皿は必需品だ。カセットコンロを営業車両に積み込んで、取引先の給湯室で調理することもある。

家庭にない商品を連発

 昨年、創業100年を迎えた桃屋。「ごはんですよ!」や「キムチの素」といった商品構成に大きな変化はないが、10年近く前から営業のやり方ががらりと変わった。商品を「ご飯のお供」にしてもらうだけでなく、「調味料」として使うレシピを次々に考案。小売りの客先では価格や取引量の交渉に加え、レシピをアピールして特売イベントの棚に並べてもらったり、売り場で「桃屋フェア」を開いてもらったりするようになった。知名度に頼った営業をやめ、じり貧だった定番品の売り上げが反転。2020年9月期まで7期連続の増収増益となった。

7期連続で増収増益となった
●桃屋の業績の推移
注:官報の決算公告を基に日経ビジネス作成

 桃屋は日本の食卓に無い商品を次々に生み出す商品開発力で業界をリードしてきた。創業者の小出孝男氏と2代目社長で現名誉会長の小出孝之氏は、青さのりをとろりとした食感に仕上げた海苔佃煮のごはんですよを1973年に発売。68年にはザーサイを中国から持ち込んで瓶詰めにし、日本に広めた。

 主婦が家庭で調合していためんつゆを瓶商品にして定着させたのも桃屋だ。この間、喜劇役者の三木のり平氏をアニメ化した長年のテレビコマーシャルで社名も広く知られている。

ダジャレとパロディーで彩った歴代のCMは商品を強く印象付けた

 だが、日本の食卓が豊かになり、洋食化も進むと桃屋の商品は思うように売れなくなった。先行していためんつゆもしょうゆメーカーが後追いで参入。原料からの低コスト一貫生産で価格を下げ、桃屋は大打撃を受けた。

 80年代に300億円ほどだった売上高は、2013年9月期には112億円まで落ち込んでいた。打つ手が見えない中、小出孝之氏の娘婿、小出雄二氏が勤めていた味の素を辞め、11年4月に桃屋に入社。12月に社長に就任した。

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