活況のホームセンター業界で首位を奪還したカインズ。職人向けの作業服を一般向けに訴求して躍進したワークマン。両社はともに群馬県発祥のベイシアを中核とするベイシアグループの一員だ。個性的で勢いのある2社はなぜ同じグループから生まれたのか。チェーン売上高が1兆円に達した強さの源泉を探った。

ワークマンの業績をけん引する「ワークマンプラス」(右)はカインズの新業態(左)の長所を取り入れた

 11月上旬、埼玉県朝霞市に開店したばかりのカインズ朝霞店。日用品や雑貨、園芸用品が並ぶホームセンターの広大な売り場に、ロボットがぽつんとたたずんでいた。

 ロボット上部に備え付けてあるディスプレーで、探していたじょうろのノズルを選んでタッチしてみた。ロボットがゆっくりと動き出し、ノズルが並ぶ棚の前で止まる。「お求めの商品は下から3番目の棚にあります」。案内を終えて30秒たつと、ロボットは元の場所に自ら帰っていった。

ワークマンを生んだ土壌

 朝霞店はカインズが今持つデジタル技術をフル活用した店舗だ。園芸の専門家にリモートで相談したり、ウェブサイトからドッグランを予約したりするサービスを始める。オンラインで注文した商品を店舗に設置したロッカーで受け取ることもできる。

 ホームセンターの競争軸は立地や品ぞろえ、価格だった。カインズはそこにいち早くデジタル技術を持ち込み、今年に入って東京・表参道にデジタル事業を開発する100人規模のラボを設置。店舗づくりも経営もデジタルトランスフォーメーション(DX)に一気にかじを切っている。2019年度には、M&Aを繰り返して長年、ホームセンター業界で首位を走ってきたDCMホールディングスを売上高で13年ぶりに追い抜いた。

 カインズは群馬県前橋市に本社を置く大型スーパー、ベイシアを中核とするベイシアグループの一角だ。グループは小売り6社に加え、物流やシステム、不動産など計28社で構成している。その中にはプロ向けの作業服を一般向けに売り出して急成長した上場企業、ワークマンもある。

 グループのチェーン全店の年間売上高は20年ほど前まで3000億円強だったが、20年10月までの1年間で初めて1兆円を超えた。ベイシアは北関東中心の出店で、グループの知名度は高くない。しかし、M&Aではなく、自前の成長だけで大手百貨店と比肩するまでに規模を広げてきた。

 グループ経営を引っ張ったのが個性的で勢いがあるカインズとワークマン。尖(とが)った2社を生み出せた理由を、創業者、土屋嘉雄氏の甥(おい)でワークマン専務の土屋哲雄氏に聞いてみた。

 「現場のことは現場が一番分かっている。ベイシアグループはとにかく現実的。グループシナジーを出そうなんて言いださない」。哲雄氏はグループの経営をこう評している。各社それぞれが自分たちの判断で経営をしてきたことが結果につながっているという。「一体化」「グループ一丸」「シナジー追求」などという、企業集団が掲げがちな標語がどこからも聞かれない。

続きを読む 2/5 群馬の服地専門店が源流

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