技術力を武器にシェアトップの不動の地位を築いたものづくり企業が今、力を注ぐのが自転車文化の創造活動だ。自転車による地域活性化を縁の下でサポート。自転車の地位向上と企業の成長は切り離せないとの思いがある。生産・開発の現場にも改革のメスを入れ、次に狙いを定める「eバイク」市場で異業種との戦いに備える。

白壁や格子窓が並ぶ古い町並みを、ゆったりと自転車の一行が通り過ぎていく。かつて城下町として栄えた岡山県真庭市の勝山地区。観光局と地元店主が協力して進めるのが、地区内に点在する名所を自転車で散策する「散走」という取り組みだ。

古い酒蔵や木造の小学校校舎、地元の人しか知らない川沿いの桜並木──。歩いて回るには少し距離のある場所でも、自転車をのんびりと走らせれば十数分でたどり着く。

真庭が自転車による街おこしに着手したのは2013年。市の関係者が東京・南青山にある自転車の文化発信拠点「OVE(オーブ)」を訪れたのがきっかけだった。ワークショップを開くなど試行錯誤を重ね、16年に新たな観光プログラムをスタートさせた。
近年、全国各地でこうした自転車を活用した街おこしの活動が広がっている。これを陰ながら支え、火付け役となっているのが、変速ギアのシステムやディスクブレーキなどを手掛け「自転車界のインテル」とも称されるシマノだ。散歩をするように自転車で走る。散走という造語を生んだシマノは、OVEを運営するほか、「地域交流会」というイベントを開催。全国の地方自治体に散走の取り組みを普及させる草の根の活動に力を注いでいる。
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