保険商品の提案から契約までをオンラインで完結するサービスを国内生保でいち早く開始した。契約数の伸び悩みが続く中、デジタル技術を活用したサービスや業務の変革に活路を見いだした。矢継ぎ早に変革を進める裏にあったのは、組織を自在に変える「機敏」な体制づくりだった。

<span class="fontBold">ビデオ会議システムで詳細を説明しながら顧客の要望に合わせて保険商品をカスタマイズし、オンラインで契約手続きを完了できるサービスを始めた</span>
ビデオ会議システムで詳細を説明しながら顧客の要望に合わせて保険商品をカスタマイズし、オンラインで契約手続きを完了できるサービスを始めた
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 「対面と同じように、互いに顔や反応を見ながらコミュニケーションできるようになった」。神奈川県中心にアフラック生命保険の販売代理店を展開するインキューブ&リリーズHLDGS.(横浜市)で保険の「募集人」を務める岩本幸典氏は、アフラックが10月26日に始めた新サービスの手応えをこう語る。

 アフラックが開始したのは、保険商品の提案から契約の申し込みまでの流れをオンラインで完結できるサービスだ。代理店の担当者が、ビデオ会議システムを使い顧客にパンフレットなどの情報を画面で共有しながら説明。年齢や病歴などを聞きながら、保険商品の内容を顧客ごとに最適化していく。最後に顧客が自らのスマホ画面に指で署名することで申し込みが完了する。

 アフラックは8月に自社のコールセンター限定でオンラインでの保険販売をスタート。10月末から約600の販売代理店へ展開した。開始から2日間のオンラインでの契約数は約300件。「良いスタートダッシュを切れた」と、新サービスの開発を主導したアフラックの天白孝幸氏は手応えを口にする。

 生命保険は契約内容の複雑さもあり、現在も対面営業が主流だ。ネット専業のライフネット生命保険などが提供するのは定型商品が中心で、きめ細やかなカスタマイズはできない。オンラインで手続きが完結する商品の加入割合は、生保業界全体でわずか数%にとどまっていた。

 カスタマイズした生保商品の販売を直接対面せずに完結できるのはアフラックが国内生保で初めてとなる。新型コロナウイルスの感染拡大で対面営業が難しくなる中、新たな営業手法として先手を打った格好だ。対応する販売代理店は徐々に拡大。約9200店舗ある「残りの代理店にもなるべく早く導入したい」と天白氏は意気込む。

DXなしではもう勝てない

 1955年に米ジョージア州コロンバスで設立されたアフラック。74年に日本支店を設立し、国内初となるがん保険の販売に踏み切った。現在も国内のがん保険・医療保険保有契約件数ではトップを誇る。

 そんなアフラックが経営の最重要課題として取り組むのがデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。米本社の日本支店だったアフラックを株式会社に転換した2018年4月以降、日本独自の取り組みとして本格化。20年2月に公表した初の中期経営戦略でも「デジタルイノベーションを積極的に活用する」と表明するほど、DXを経営の中心に据えようとしている。