笑顔で数字はカバーできない

 コロナに耐える店づくりにつながったコスト管理の秘訣を竹市氏に聞くと店長の能力にあるという答えが返ってきた。「店長の経験値がダイレクトに店の質となって現れる」。炭焼きも店内の野菜カットも、そして店舗全体のコスト管理も、店長次第で水準を上げられるかどうかが決まるという。

 223億円の売上高(19年12月期)の100%が店舗での収入で、1店舗の月商は平均で1400万円ほど。オペレーションの難度が高いため、「店長のやり方一つで月商も200万円程度変わることもある」(教育企画部の山口隆志部長)ほど経営を左右する。

 「店長としてこんな管理では、お客さんを笑顔にできないよ」。2年前、横浜市にある緑園都市店の遠藤佳津菜店長を営業部のエリアマネジャー、志村豊氏が叱責していた。調理や人員配置、コスト管理で̪失敗が目立つ。「サラダバーに料理が何もないよ」。食材の補充を失念してしまったことを来店客に指摘されたこともあった。

 このころ本部では店長の経験不足が問題になっていた。名古屋から離れた既存店に目が行き届かず、売上高が伸び悩み、18年12月期の営業利益率は11.6%。高収益には違いないが、4年前に比べ4ポイント近く下落していた。

 既存店でいい店づくりができたと判断し、14年から18年にかけて5年間で61店舗を増やした。11年に東証・名証2部、12年には東証・名証1部に上場し、株主の期待も高まっていた。出店は成長のために必要だったが、やはり人材育成が追い付かない。12年に50人だった新卒採用は17年から19年まで100人以上。10年に185人だった社員数は19年に527人にまで増えた。

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 16年入社の遠藤氏もこうして誕生した若手店長の1人だ。神奈川県内の店舗のホールリーダーや本社のリクルーターを経験した後、3年目で店長になった。接客には自信があり、志村エリアマネジャーも「ホールでのオペレーション能力は高かった」と話す。

 だが、調理も店舗全体の運営経験もない。サラダバーを空にしてしまっても笑顔でカバーしきれたが、数字はどうしようもなかった。特に深刻だったのが食材の廃棄ロスだ。神奈川県内7店舗のなかで緑園都市店の原価率は他店よりも1ポイントほど高かった。

 問題は管理の甘さにあった。リブロースステーキ300gが6人分売れたはずなのに、冷蔵庫からは8つが無くなっている。けさ入荷した食材の個数から販売分を差し引いた数が合わない──。1日のオペレーションの中で誤認して客に提供したか、伝票を打ち間違えている可能性がある。客にも申し訳ないし、食材の管理日数に狂いが生じてしまい、廃棄ロスにもつながる。

<span class="fontBold"> <span style="border: solid #5b7bab 2px; background-color: #5b7bab; color: #fff ">  1 </span>炭火焼きのステーキは火力調整など技量が求められる <span style="border: solid #5b7bab 2px; background-color: #5b7bab; color: #fff "> 2 </span>サラダバーの野菜は店内カットし、季節ごとにメニューを入れ替える。オペレーションの負担は大きい <span style="border: solid #5b7bab 2px; background-color: #5b7bab; color: #fff ">  3 </span>横浜青葉インター店の遠藤佳津菜店長 <span style="border: solid #5b7bab 2px; background-color: #5b7bab; color: #fff ">  4 </span>「2年の店長経験でコスト意識を徹底できるようになった」とエリアマネジャーの志村豊氏も太鼓判を押す </span>
1 炭火焼きのステーキは火力調整など技量が求められる 2 サラダバーの野菜は店内カットし、季節ごとにメニューを入れ替える。オペレーションの負担は大きい 3 横浜青葉インター店の遠藤佳津菜店長 4 「2年の店長経験でコスト意識を徹底できるようになった」とエリアマネジャーの志村豊氏も太鼓判を押す
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