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コロナ禍で大打撃を受けた外食業界にあって、いち早く営業損益が黒字に転じた。20年近くにわたる高級路線と地道な原価低減の取り組みが実を結び、地力を見せている。その源泉は店長だと竹市克弘社長は言う。FCを出さず、全店直営。会社を引っ張る人材の育て方を探った。

10月上旬、名古屋市内で開かれた東海・関西地区の店長会議。100人以上の店長やエリアマネジャーらが店舗運営の収益性や人員配置の在り方を議論した

 「うちは収益性が高い。売り上げが落ちても今日、明日につぶれることはありません」。10月7日、ステーキハウスチェーン、ブロンコビリーの名古屋市の本社に近いビルの一室。東海、関西地区から集まった120人の店長を前に竹市克弘社長がこぶしを振っていた。

 店長たちの顔を見渡した竹市氏はこう続けた。「外食業界が存在意義を問われている。『本当にブロンコビリーに行きたいのか』と顧客が考えるようになった。今まで通りでは転落してしまう」

 コロナ禍は外食業界に暗い影を落とした。外出自粛による来客減だけでなく、食の習慣自体を変えてしまい、既存業態が生き残れるかどうかも分からない。日本フードサービス協会によると、ファミリーレストランの売上高は緊急事態宣言が解除された後の6月以降も9月まで前年同月に比べ2~3割の減少が続いている。外食大手、すかいらーくグループの既存店売上高も2~3割減、ステーキチェーンのいきなり!ステーキは3割以上の下落が続く。

 ブロンコビリーも例外ではない。店舗の6割を休業した4月は78%減で5月も51%減、6月は25%減だった。7月は一部商品の値下げキャンペーンで5.6%減まで持ち直したものの、8、9月は再び2割前後のマイナスとなった。

 だが、減収の中でブロンコビリーは営業損益をいち早く黒字に戻した。3~5月は各月で営業赤字となったものの、6月からは単月黒字。7~9月期の営業利益は4億円で売上高営業利益率は8.2%に回復した。すかいらーくやサイゼリヤといった大手外食の巨額赤字を横目に安定した経営を見せつけた。

 1978年創業のブロンコビリーは東海地方を中心に関東、関西に128店舗(10月末時点)を持つ。看板メニューの「炭焼き超粗挽きビーフハンバーグ 210g」はライスやサラダバーをつけたセットで1700円台と、レストランチェーンの中では高価格だ。営業利益率は近年10%台で推移し、外食産業の高収益銘柄として知られる。

 牛肉を自社工場でステーキ、ハンバーグ、ミンチにして廃棄ロスを減らすなどコストを抑制。材料費と人件費の合計値が売り上げに占める割合は50%台と、外食業界で平均値とされる60%強を引き離している。

 2001年のBSE(牛海綿状脳症)の騒動で受けたダメージから収益重視にカジを切り、無理な出店を抑えてコスト管理に万全を期す経営を貫いてきたことが奏功している。こうした経営の大方針がコロナによる売り上げ減少を吸収できる体質を導いた。

 コストを削る一方で、店内調理のサラダバー、魚沼産コシヒカリをかまどで炊いたライス、炭焼きでの肉調理と手間をかけた店づくりにこだわった。出店を絞ってこそできた芸当だ。この間、世の中は人手不足。店舗を増やすことを重視する競合に模倣を許さなかった。

日経ビジネス2020年11月16日号 50~54ページより目次