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中期経営計画で示した業績目標の未達を、何度も繰り返してきた。社内に「やり抜く力」を定着させようと信賞必罰を徹底したところ、1年前倒しで売り上げ目標を達成。電機業界の「名門」復活に向けて、社長が陣頭指揮を執った。

新野隆NEC社長(左から4人目)は現場に足を運び、社員と積極的に交流する。経営方針も自ら直接説明している(上)

 株式市場でNECへの評価が高まっている。NEC副社長の新野隆氏が社長に昇格した2016年4月に7000億円前後で推移していた時価総額は、4年半後の20年10月に2倍以上の1兆6000億円前後に達した。

 大和証券は今後も株価の上昇基調が続くとして「買い」の投資判断を下している(10月29日時点)。担当アナリストの上野真氏は「社長就任当初はおとなしかった新野さんが豹変(ひょうへん)した。多くの経営者を見てきたが、任期途中での大化けはめったにない」と評する。

不都合な真実、報告されず

 「おとなしい」新野氏が変わり始めたのは、社長就任から8カ月ほどがたった16年暮れだ。川島勇CFO(最高財務責任者、当時)から事前に受けていた「16年度第3四半期の業績が悪い結果となりそうだ」との報告の通り、業績悪化が確定的になった時期である。

 それまで新野氏は川島氏の悲観的な見通しに対して、「そんなことはないはずだ」と疑っていた。公共・医療・金融向けの事業部門や、通信会社向けの事業部門など、「ビジネスユニット(BU)」と呼ぶ9つの大組織を率いる各BU長たちが、新野氏に「上期は不調だったが、毎年収益が集中する下期に巻き返す」との楽観的な報告を上げてきていたからだ。

 だが16年度第3四半期の数値が固まってくるにつれて、下期に入っても不調が続いていることが濃厚になった。年度末を迎え、16年度通期決算の蓋を開けてみれば、売上高は前年度比5.7%減の2兆6650億円、営業利益は同54.2%減の418億円の減収減益となった。特に営業利益は期初に予想した1000億円の半分にも届かなかった。

 新野氏は「とんでもない結果だ。企業文化に問題がある。ビジネスプランを立てることはできるけれども、最後まで『やり抜く力』がない」と痛感した。BU長から末端の社員まで実行力を植え付けるべく、「新野改革」が始まった。

 まず決断したのが16年度にスタートしたばかりだった3カ年の中期経営計画の撤回だ。自らが策定を主導した中計だったが、このままでは最終年度である18年度の業績目標を達成できないと判断した。

 18年度を初年度とする新たな3カ年の中計を急いで策定し、18年1月に公表した。最終年度である20年度の業績目標は、撤回した中計と同じ売上高3兆円、営業利益1500億円、営業利益率5%とした。

 株式市場の反応は冷ややかだった。それは、NECには「前科」があるからだ。遠藤信博会長が社長だった時代に取り組んだ10~12年度と13~15年度の中計は、どちらも最終年度の業績目標を達成できずに終わっていた。半導体などの分野で世界一を誇ったかつての「名門企業」は見る影もない。中計を練り直して目標達成時期を2年間延期したところで、NECにはもはややり抜く力はないとの諦めが株式市場に広がっていた。

中計や業績予想の未達が続いた
●NECの業績推移
注:1998〜2004年度は米国会計基準、05〜15年度は日本会計基準、16〜20年度はIFRS
日経ビジネス2020年11月9日号 54~57ページより目次