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創業者の功績が大きいほど経営継承は難しい。2代目の能力が問われる上、古参社員が付いてくるかという問題もある。ましてやその創業者が、日本中のお茶の間で広く知られた存在だったら、ますます2代目の存在はかすみがちだ。ジャパネットの2代目が取った手法は就任後の改革ロケットスタート。5年間の組織改革はコロナ下の経営も支えている。

テレビの通販番組は長崎県佐世保市の本社にある自社スタジオで制作する

 「その表現だとお客さんに理解してもらえないかもしれないですね」。8月下旬、東京・港のジャパネット麻布オフィス。バイヤーがモニター越しに、長崎県佐世保市にある放送スタジオでのリハーサルをチェックしていた。商材はウオーターサーバー。設置無料サービスが受けている近年の売れ筋だ。

 バイヤーは生放送が始まってからもスタジオに連絡を続ける。「電話がどんどんかかってきて、すごく売れている。メーカーに連絡して急きょ、数を確保できたので大丈夫」。台本なしで進行するMC(語り手)はこれを受け、リアルタイムの売れ行きを紹介するなど臨機応変に対応していく。

 テレビショッピングを手掛ける事業会社、ジャパネットたかたが知られている持ち株会社、ジャパネットホールディングス(HD)。スタジオを自前で持ち、生放送にこだわって臨場感を引き出す手法を編み出したのが、自らも番組に出演していた創業者、髙田明氏だ。2015年に社長を退き、16年に通販番組のMCからも引退。今は甲高い独特の口調は聞かれず、現場で社員を鼓舞する名物だった姿も見られない。

 社長職は長男で1979年生まれの髙田旭人氏が引き継いだ。東京大学卒業後、証券会社を経て2004年にジャパネットに入社。父親の知名度が高く、創業者としての影響力も大きかったことから、後継発表後は「お手並み拝見」という空気が社内外にあった。

 しかし、ジャパネットHDは旭人氏の社長就任後も5期連続で増収を続け、19年12月期のグループ売上高は2076億円と5年間で35%増えている。今期も新型コロナウイルスにより通販需要が高まる中、安全対策に万全を期したことが奏功し、前期比10~15%伸びる見通しにまでこぎ着けた。

 東大卒の2代目、就任時35歳、金融マン出身──。小さなカメラ販売店から起業し、社内外で人気者の父親とは対照的な存在だと多くの社員の目には映った。ただ社長室長などのポストに就き、明氏に寄り添うようにして経営を見てきた髙田社長には目算があった。

 10年以上の観察で分かった父親の経営は「テレビで商品を紹介する姿にフォーカスされがちだが、それは表層」。商品やサービスに妥協しない点に明氏の長所があり、「父が感性で実行したことを戦略に落とし込めばいい」と考えた。「性格も違い、父と同じことはできない」と判断し、番組出演をしない方針を周囲に伝えると、就任直後から3つの視点で会社を変えていった。