KDDIは金融分野を成長領域と位置付け、スマートフォンを基盤にした新規事業として育てる方針だ。グループ入りした銀行、証券会社などと連携し、他にないサービスを開発している。通信事業で培ったデータや発想を異分野の子会社と共有し、従来の金融サービスの壁を破る。

「成長を期待する金融分野が伸びている。目標を前倒しで達成した」。5月、KDDIの高橋誠社長は記者会見でこう話した。スマートフォン決済額やクレジットカード決済額、住宅ローン実行額などを合計した独自のグループ指標「決済・金融取扱高」が、2020年3月期に6兆5000億円となり、計画より2年早く6兆円を超えた。
決済・金融取扱高は同社の金融サービスがどれだけ使われているか評価するもの。6兆5000億円という金額はクレジットカード大手、三菱UFJニコスが発行するカードの年間決済額約6兆円(20年3月期)を上回る。KDDIは携帯電話市場の飽和をにらみ、新たな収益を確保するため通信大手の中でいち早く金融事業の育成を掲げてきた。
KDDIが金融分野に本格参入したのは08年。当時の三菱東京UFJ銀行と折半出資で、ネット専業のじぶん銀行(現auじぶん銀行)を設立した。以来、ネット損害保険などへ手を広げており、auの携帯電話の利用者以外にも幅広い金融サービスを提供している。

19年はさらに力を入れて事業育成の歩みを速めた。2月、スマホ決済サービス「au PAY」を預金、決済、投資、ローンといったあらゆる金融サービスの入り口としていくスマートマネー構想を発表。4月にはじぶん銀行への出資比率を63.8%に引き上げて連結子会社にした。カブドットコム証券(現auカブコム証券)にはTOB(株式公開買い付け)を実施し、49%を出資した。
決済・金融取扱高が増えている背景には、KDDIグループとして金融市場になかったサービスを生み出していることが挙げられる。通信データなど畑違いの資産を金融分野に活用する試みが、成果を生み出し始めている。
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