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日本にある655万戸のマンションの1割を建設してきた長谷工コーポレーション。11年前から試行錯誤してきたデジタルトランスフォーメーション(DX)がいま、花開きつつある。新しい試みは誰もが慎重になりがちだ。社内の反対勢力を説得し続けた責任者が社長に就き、DX第2ステージが始まる。

設計施工をデジタル技術で効率化している。設計中の建物の配管をCGで確認していた(写真=陶山 勉)

 新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた4月1日、長谷工コーポレーションで6年ぶりとなる社長交代があった。新社長の池上一夫氏は就任時62歳。親分肌で飲み会好きだ。どちらかというとこわもてでもあり、古いタイプの経営者という印象を内外に与えたかもしれない。

 だが、これに先立ち2月に開いた就任会見では、イメージとは真逆のスピーチをしてみせた。「デジタルトランスフォーメーション(DX)により生産性を引き上げるのが、私の使命」「用地情報、マンション建設、販売、管理などの各部門がそれぞれアナログで管理してきた情報をデジタル化する」

社長就任の日に「DX推進室」

 口を突いて出てくるのはデジタルという言葉ばかりだ。社長就任日には「DX推進室」も設置。極端なDX傾斜にカジを切ったようにみえるが、社員は冷静に受け止めている。池上氏こそが11年前からデジタル転換を唱え、一時は会社を大混乱させた張本人であり、いま長谷工をデジタル強者へと近づけた立役者でもあることが社内で知られているためだ。

 この間の長谷工は業界で存在感を高めてきた。安倍政権発足後の日銀による量的緩和でマンション市場が活況を呈し、次々に新規開発を開始。折からの人手不足を受け、デベロッパーからの施工受注も積み上げた。2013年に23.4%だった首都圏の新築マンションの施工シェアは19年に38.3%に伸びた。社内が活気にあふれる中、池上氏らは時に社内の抵抗に遭いながら、コツコツとDXへの転換を進めてきた。

日経ビジネス2020年8月10日号 48~52ページより目次