全4701文字

主力事業で稼いだキャッシュを生かし、新規事業を小さな種から育てる「両利きの経営」を実践するAGC。技術者が部門の壁を越えて交流しやすくし、次のビジネスの種が自発的に生まれやすい仕組みを作っている。事業の役割を決めるトップダウンと、若手の活力やアイデアを引き出すボトムアップが両輪となっている。

関連記事
AGCの「両利き経営」(上) 主力が稼ぎ、傍流が種をまく

若手技術者がプレゼンをする「ゴングショー」では研究テーマを互いに認め合う(上、下)

 「色のついたガラスを作ってみたいと思うのですが、いかがでしょうか?」「複層ガラスに樹脂を混ぜ込みたいのですが、一緒にやってくれませんか?」──。

 横浜市にあるAGCの中央研究所。約100人の技術者が集まり、主に若手がやりたいテーマを3分ほどでプレゼンテーションしていく。例えば「音を出すガラスを開発したい」と新規事業のアイデアがでると、「ぜひうちの部署と一緒に」「もっと詳しく聞きたい」など、その場で承認や審査するかのごとく事業部長らが次々と札をあげる。

 このイベントの名前は「ゴングショー」。スタートアップ企業が投資家にアピールする「ピッチイベント」のようにも見えるが、緊張感よりもリラックスしたにぎやかな雰囲気が会場を覆う。

 ほかの技術者や他部門の研究テーマを知って認め合い、面白がるのがこのイベントの基本的なスタンスだ。それでも実際に研究テーマが承認されれば予算がついたり、他部署との共同研究が始まったりする。

日経ビジネス2020年7月6日号 52~55ページより目次