実は事業転換の巧者

 あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や、クルマ業界での自動運転や電動化などの「CASE」の普及に伴い、センシング技術が今後のビジネスの鍵を握るのは間違いない。ただ、TDKは単純に流行に飛びついているわけではない。これまでも巧みに事業ポートフォリオを変えてきた。センサーは戦略の「次なる一手」なのだ。

 1935年創業のTDK。東京工業大学で発明された磁性材料「フェライト」の工業化を目指して設立された。このフェライトをベースに、磁石に加えて、インダクター(コイル)、コンデンサーなど数多くの受動部品に応用してきた。70年からはカセットテープ、80年代からはHDD用の磁気ヘッドなど、TDKの屋台骨を支える事業を次々に入れ替えてきた歴史がある。

 注目すべきは、主力事業が元気なうちに新事業の種をまき育てた点だろう。

 冒頭の浅間テクノ工場を見てみよう。センサーの開発を始めたのは2009年。当時の工場責任者だった石黒現社長が主導して着手した。そのころのTDKといえば、HDDヘッドが会社の屋台骨。10年3月期には磁気ヘッドを含む「記録デバイス」事業の売上高は、2789億円と連結売上高の約35%を占めていた。そんな時期から「次なる一手」を探っていたことになる。

 磁気ヘッドの技術を何に生かすか。石黒社長と酒井技監を含むわずか4人での「闇テーマ」として検討がスタート。議論の中で、磁気ヘッドはHDDのデータを磁気を使って高精度に読み取る「優秀なセンサーだと気づいた」(石黒社長)。ターゲットは電動化が加速する車載。クルマのステアリングの回転角を測定する角度センサーに狙いを定めて開発へ踏み切った。

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