全5729文字

電子部品大手のTDKが、センサー事業への転換を急いでいる。祖業の磁気技術をセンサーに応用。M&A(合併・買収)も加速する。社内に根付く健全な危機意識が原動力。今回も事業転換を果たせるか。

①TDKでは2019年末から「TMR電流センサー」のサンプル出荷が始まった②磁気ヘッドからセンサー工場に生まれ変わった浅間テクノ工場の外観③工場内部は半導体工場のように黄色のランプを使用

 JR北陸新幹線の佐久平駅からクルマで約10分。「日本百名山」に数えられる浅間山を望む、TDKの浅間テクノ工場(長野県佐久市)では2019年末からある戦略商品のサンプル出荷が進む。

 その名は「TMR電流センサー」。浅間テクノ工場を含む世界中の開発拠点の力を結集させて開発された。競合品に比べて3割小型化しながら、最大1200アンペアの大電流を1%の誤差なく測定できるのが特徴で、ハイブリッド車やEV(電気自動車)の電池残量の測定に応用すれば走行可能距離を正確に推定できるようになる。TDKでは数年先の採用を目指し、車載部品大手に売り込みをかけている。

 浅間テクノ工場では、性能を左右するセンサー素子の設計と製造を担う。工場内に足を踏み入れると、素子を作るための露光装置や現像装置がズラリと並び、さながら半導体工場の雰囲気を醸し出している。

 実はこの工場、数年前まではセンサーではなく、HDD(ハードディスクドライブ)のデータの読み取りや書き込みに使う「磁気ヘッド」の工場だった。「14年末から段階的にセンサー生産に切り替えており、今では完全にセンサー工場に生まれ変わった」と浅間テクノ工場の酒井正則技監は話す。

テープからヘッド、そしてセンサーへ
●TDKの連結業績推移と主な取り組み

 電子部品大手のTDKがセンサーへの事業転換を急いでいる。19年3月期の連結売上高(1兆3818億円)に占める「センサ応用製品」の割合は5.5%にすぎないが、石黒成直社長は「将来的にセンサーを主力事業に育てていく」と本気だ。

日経ビジネス2020年4月13日号 58~62ページより目次