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心臓や脳のカテーテル治療に使う器具や人工心肺装置など先端医療機器に強みを持つ。売上高はこの20年で3.7倍に拡大。売上高営業利益率は15~20%と欧米のライバルと遜色ない業績だ。得意技術を磨いて競争力を高めてきたように見えるが、苦難の末に「脱・自前主義」にカジを切った歴史がある。

湘南センターにあるトレーニング施設では国内外の医療関係者やテルモ社員が機器に触れながら手技の理解を深める

 新型コロナウイルスの感染拡大で日々の体温計測が習慣になった人も多いだろう。その体温計で国内シェア2位につけるのがテルモだ。

 第1次世界大戦後の混乱の中で輸入が途絶えた体温計を国産化するために、北里柴三郎博士らが発起人となって1921年に設立されたこともあり、テルモの主力製品は今も体温計というイメージが強いかもしれない。だが、創業100年を控える今、売上高に占める体温計の割合は1%弱にすぎない。狭心症や心筋梗塞の患者の血管をカテーテル(医療用細管)を使って治療するための機器が事業の中核だ。

 業績は堅調だ。売上高に当たる売上収益の2020年3月期通期見通しは前期比6%増の6350億円。売り上げ規模は10年前の2倍、20年前と比べると3.7倍に達する。売上高営業利益率は15~20%の水準を維持しており、欧米の医療機器大手と比べても遜色のない収益性を誇る。

 この20年の成長を後押しした要因は2つある。1つはグローバルで戦える体制を築くためのM&A(合併・買収)。1999年に米スリーエム(3M)から人工心肺装置事業を買収したのを手始めに積極化。2011年には約2100億円を投じて輸血関連機器の米カリディアンBCTを買収するなどして事業の裾野を広げてきた。

 M&A以上に成長を促したのが、心臓カテーテル治療の普及だ。血管内にカテーテルを挿入し、心臓周辺の血管の詰まりなどを改善するこの治療法は、胸を切って迂回路をつくるバイパス手術より患者への身体的負担が軽い。手術期間も短く、医療費も抑えられることから世界的に広がった。テルモで心臓カテーテル治療向けの機器を担当する「心臓血管カンパニー」が全社売上高に占める割合は20年前は3割強だったが、直近では56%まで増えている。

独自技術で世界シェア60%

右肩上がりで成長を続けてきた
●テルモの通期業績と主な買収

 心臓カテーテル治療の世界的な普及にはテルモが編み出した画期的な治療法の存在がある。