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資産規模では全国最小の銀行だが、底堅い収益力を見せている。財務省出身の頭取が構築してきた金利重視の営業スタイルが奏功した。人口減が進む地方で生き残るためには、継続的な意識改革が必要となる。

部下と話をする佐賀共栄銀行久留米支店の秋岡秀和支店長(中央)。金利重視の営業を自ら率先して行っている(写真=諸石 信)

 「他行が0%台の金利を提示してきたんですよ。同じ水準まで金利を引き下げてくれないなら、そちらの融資に乗り換えようと思っています」

 佐賀共栄銀行久留米支店の秋岡秀和支店長は昨年、ある取引先からこんなプレッシャーをかけられた。アパート投資をしている取引先で融資額は2億6000万円。それに対し秋岡支店長は「あいにくですが、我々は身の丈に合った金利しか提示できません」と回答し、引き下げに応じなかった。

 結局、この取引先は他行に乗り換え、顧客を失うことになったが、秋岡支店長のマイナス評価にはつながっていない。なぜならそのマイナス分を補う形で別の取引先を見つけたからだ。同じ月に3億2000万円の融資案件を獲得。金利は2%だ。失った分を補ってあまりある結果となった。

 日銀の異次元金融緩和が続く中、銀行ではどこも融資先を開拓するため、低金利競争を展開している。だが、佐賀共栄銀の営業姿勢は、そんな動きとは一線を画す。秋岡支店長のように、金利競争には距離を置き、丁寧な営業活動を通じて一定の金利収入を得るよう意識改革に努めてきたからだ。

資産規模では全国で最小
●全国地方銀行の資産規模ランキング
注:2019年9月中間期、単体ベース
赤字転落予想だったが、V字回復
●コア業務純益の推移
佐賀共栄銀行は17年3月期から反転上昇
●佐賀共栄銀行と全国の平均金利の推移
出所:佐賀共栄銀行、全国銀行協会
店と人を減らしてコスト削減を断行
●店舗数と従業員数の推移

 こうした営業姿勢の変化は、2014年6月に就任した二宮洋二頭取が5年の月日をかけて進めてきた改革の成果だ。

 佐賀共栄銀の総資産は2702億円(19年9月中間期)。全国の地方銀行の中で最も少ない。規模だけみると弱小地銀のようにみえるが、他の銀行がマイナス金利政策による収益悪化に苦しむ中、底堅い業績を残している。融資残高に金利をかけた貸出金利息収入は3期連続で前年比プラスを達成。銀行の稼ぐ力を示す指標の一つ、「コア業務純益」も同じ期間に3億9800万円から、8億円に倍増させている。

 改革の主導者である二宮頭取は財務省の出身。就任時、“黒田バズーカ“による日銀の超低金利政策で銀行経営に不安が台頭していた。そこで総合企画部に命じて将来の収益シミュレーションを実施したところ、18年3月期にコア業務純益が赤字に転落するとの予想が出た。恒常的な赤字に陥れば銀行存続に関わる。「すぐに手を打たなければ、生き残れないと考えた」(二宮頭取)

 まず打ち出したのがコスト削減策だ。19年3月期までの5年間で店舗数を36から25に、行員を約400人から約300人にそれぞれ減らし、固定費を削減した。地域の代表企業でもある銀行の動向は、雇用環境にも影響することから、大胆なコスト削減策を打ち出しづらいが、財務省出身の二宮頭取はしがらみのなさを武器に敢行した。

日経ビジネス2020年3月16日号 68~71ページより目次