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トヨタ自動車がレースで勝つことを「経営上の重要課題」と位置付けている。モータースポーツが人気の欧州では、レース結果が販売増にも寄与しつつある。コモディティー化に抗うブランドを作るためには、モノでなく物語を提供することが不可欠だ。

8月初旬のWRCラリー・フィンランドは、トヨタ自動車の「ヤリス」が首位を快走(左)。昨年の同大会でも優勝し、喜ぶ豊田章男社長(上)(写真=Panoramic/アフロ)

 日本から遠く離れているものの、トヨタ自動車の経営幹部が多くの時間を割く場所がある。

 2017年に同社が18年ぶりに再参戦した、世界ラリー選手権(WRC)の現場だ。WRCは世界のモータースポーツではフォーミュラ1(F1)に並ぶ人気を誇り、1シーズンで14戦が欧州を中心に世界各地で開催される。豊田章男社長や早川茂副会長、友山茂樹副社長が頻繁にその会場を訪れチームを激励しているのだ。

 シーズン後半戦の初戦となるフィンランドではトヨタがチームの拠点を置くこともあり、地元と言える大会。昨年の豊田社長に続き、今年は友山副社長が駆けつけた。

副社長がレースに密着

 観客との距離が非常に近いラリーは一般道を100km以上のスピードで走ったり、急カーブを抜けたりする様子を間近で見ることができる。広範なエリアを走るため見る側も移動に手間がかかる。友山副社長は8月1日の初日から最終日の4日まであらゆる場所に姿を見せ、チームメートや社員とコミュニケーションを取っていた。

 フィンランドのレースでは、トヨタから出場した3台の小型車「ヤリス」のうち1台が石にぶつかってサスペンションを損傷し、リタイヤ。そんな中、トヨタ所属のオィット・タナック選手が優勝し今季4勝目を挙げた。豊田社長は「(チームは)ヤリスを“もっといいクルマ”にする努力を続けてくれていた」など喜びのコメントを寄せた。

 なぜトヨタ幹部が最前線に陣取り、力を入れるのか。友山副社長は「トヨタにとってWRCで勝つことは経営上の重要課題だ」と語る。

 18年も離れていたことで、WRC参戦前は「何から手をつけていいか分からない状況だった」(友山副社長)。豊田社長自らが、WRCで活躍したトミ・マキネン氏を口説いてチームを結成し、徐々に力をつけ、昨年は製造者部門で優勝。今年は3戦を残す時点で製造者部門は2位、ドライバーズ部門ではタナック選手がトップを快走している。

日経ビジネス2019年10月7日号 66~69ページより目次