独創的な発想と、独自技術が生み出した血友病向けのバイオ医薬品の販売が絶好調だ。親会社のスイス・ロシュのグローバル販売網を活用、年間売上高が1000億円規模になるのは確実だ。だが、ここに至るまでの道のりは長くて険しかった。苦節20年弱。大型薬誕生の舞台裏を探る。
「海外で順調に売上高を伸ばしている」。中外製薬の小坂達朗社長兼CEO(最高経営責任者)がこう手応えを語るのが、2017年11月に承認を受けた米国を皮切りに、欧州、日本などでも続々と市場投入した血友病治療薬だ。その名は「ヘムライブラ」。19年1~6月期の世界での売上高は5億ドル(約540億円)を突破、年間売上高が1000億円規模の大型薬「ブロックバスター」となることは確実だ。
ヘムライブラが売れるのは、これまでの血友病治療薬にはない特徴を備えているからだ。一つは患者にとって負担の軽い皮下注射が可能なこと。しかも、効き目は長く続き、週1回の投与で済む。従来は週3回程度、静脈内に投与する必要があり、在宅で患者が自分で注射するのが簡単ではなかった。
これまでの治療薬では重症患者では2~3割で抗体ができてしまい、薬が効かなくなるが、ヘムライブラはそうした患者にも使える。中外製薬とのヘムライブラの共同研究に携わった奈良県立医科大学小児科の嶋緑倫教授は、そのアイデアを聞いたとき、「抗体ができた患者にも使えるし、皮下注射できるので、患者も家族も楽になる。夢のような薬になると思った」と振り返る。
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