地方企業ながら、年間4億本以上を売り上げる「ガリガリ君」を抱え、2018年12月期には12期連続の増収を達成した。成長をけん引するのは、20代の若手社員が企画・開発する新商品。時に奇抜な商品でヒットを飛ばす。単にアイデアで奇をてらうわけではない。若手のやんちゃ心をヒット商品に結びつける仕掛けがある。


発売したばかりなのにもうお店にない」「抹茶ティラミスのケーキを食べているよう」。梅雨が長引いた今夏。天候不順でアイスクリーム業界は例年よりも苦しい状況だが、SNS(交流サイト)では8月に発売されたアイス「ガリガリ君 抹茶ティラミス」が話題になっている。甘さ控えめで、中にはチーズソース。口に含むと外側は抹茶味のチョコレートケーキのようだが、内側はかき氷になっていて不思議な食感を楽しめる。
こんな一風変わった味・食感のアイスを送り出したのが、赤城乳業(埼玉県深谷市)だ。夏空の下で食べる氷菓という位置づけではなく「デザート」として消費者に受け入れられることを狙った。それがかえって冷夏の今年、ファミリーマートの限定商品ながら注目を浴びることになった。ファミリーマートは「大人や女性を中心に伸び、想像以上に売れている」(広報担当者)と手ごたえを語る。
1961年に設立した赤城乳業は、年間販売本数で最大4億8000万本を記録したアイス「ガリガリ君」の開発元として知られる。ガリガリ君のほか、「ガツン、とみかん」シリーズなどを展開し、2018年12月期の売上高は471億円と12期連続の増収を達成した。それでも社員数は390人。森永乳業などの競合他社と比べて、およそ10分の1の規模にすぎない。
小粒な企業規模だからこそ、市場で埋もれてしまわない特徴ある商品づくりにこだわってきた。それが、とても氷菓とは思えない奇抜な商品に結びつく。近年も「ガリガリ君」シリーズで「コーンポタージュ」(12年)、「ナポリタン味」(14年)、「メロンパン味」(16年)などを製品化。そして、今夏は「抹茶ティラミス」だ。
時に手に取るのも気が引けるほどのインパクトを消費者に与える「ガリガリ君」シリーズ。12年に発売したコーンポタージュは発売3日で生産が追い付かずに販売停止になった。昨年も「あまおういちご味」が富士経済ネットワークスによる商品別売り上げランキングで8月第4週時点でトップになるなど、ヒット商品も確実に出ている。
●競合他社と赤城乳業の商品開発の違い

奇抜ながらもヒットになる商品を手掛けるのは、20代の若手社員だ。競合では、商品企画や営業、研究開発などの各部門に加え、外部の小売店担当者などを含めて15~20人のチームを組んで新商品を企画・開発するものだが、赤城乳業ではこれを原則、1人の若手社員が担当する。原料や資材の発注指示や、新商品の開発の決裁を仰ぐための役員へのプレゼンテーションも、若手1人が責任を負う。こうした若き企画・開発責任者が20人ほどおり、彼らがプライベートブランド商品なども含めて年180種類もの新商品を送り出す。
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