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夜9時まで営業する年中無休の相談特化型店舗など、従来の銀行イメージとはかけ離れた店舗を増やしている。銀行を取り巻く環境が激変する中、メガバンクは支店を減らしているが、生き残りのために対面販売を増やす。「空間」「時間」「ヒト」の3つの軸で店舗を見直し、顧客志向と効率化の両立を狙う。

住宅ローンの相談など来店者でにぎわうセブンデイズプラザ新宿西口店(東京・新宿)。広いカウンターがあり、リラックスした雰囲気で相談できるよう工夫している

 壁は植物の葉の緑で彩られ、沖縄のリゾート地、喜瀬の川のせせらぎが心地よく聞こえてくる。鼻腔をくすぐるのはペパーミント、カボスなどを原料にした100%天然植物由来のシトラス系アロマだ。

 無料サービスのコーヒーも普通のインスタントコーヒーではなく、米ハワイ島産のコナコーヒーなど7種類から選ぶことができる。営業時間は平日は午後1時から午後9時。土日祝日も午前10時から午後6時まで営業している。お堅いイメージのある銀行の支店だが、何から何までが違う。

 ここは、JR新宿駅前のビル2階にあるりそな銀行の個人相談特化型店「セブンデイズプラザ新宿西口」。セブンデイズという名前の通り年中無休だ。

 銀行の支店はカウンターや貸金庫、ATMなどがそろっているが、セブンデイズプラザ新宿西口の店内は70m2弱とマンション1室ほどの広さで、2人一組が座れるカウンターが3つあるだけ。しかも、事前予約制で、住宅ローンや資産運用などの相談業務以外のサービスはない。それでも、ターミナル駅の目の前という利便性と、平日午後9時までという営業時間もあり、会社帰りのビジネスパーソンでにぎわっている。

 りそなホールディングス(HD)が大阪・梅田のJR大阪駅近くに「セブンデイズプラザうめきた」をオープンしたのは2012年4月のこと。以来、新宿西口店のような相談業務に特化した小規模店舗を次々と増やしている。18年度に23店だった独自店舗は19年8月時点では30店まで増えた。

来店客の8割が現役世代

近年は少人数運営店を増やしている
●事務人員別店舗数比較
注:りそな銀行、出張所除く

 なぜ従来の支店のイメージを覆すような店舗を増やしているのか。それは店舗というリアルな場を通じて新たな顧客を取り込むためだ。

 日本には365日のうち120日ほど休みがあり、休日に店を開けただけで、利用者との接点は1.5倍に広がる。メガバンクはコスト削減の一環で支店を削減しているが、年中無休の小規模支店を増やすことで、対面でしか取れない顧客を獲得するという逆張り戦略だ。ゼロ金利環境の下、苦境にあえぐ銀行業界にとって、りそなの取り組みは一つの解決策になり得る。

 その成果は来店客の年齢構成に表れている。

 IT(情報技術)の進展でインターネットでの銀行取引が定着し、来店する個人客は減少している。既存銀行に実際に足を運ぶのは、ITを使った取引に抵抗がある高齢層が中心だ。それに対し、セブンデイズプラザの来店客は50代以下の現役世代が約8割に達している。これは、りそなの一般の支店の比率(約45%)より圧倒的に高い。

日経ビジネス2019年9月9日号 58~62ページより目次