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日本の多くの企業が採用してきた事業部制。事業ごとに採算管理しやすい体制の代名詞だが、弊害も指摘される。組織の巨大化と共に各部門は自分たちの利益だけを追求。会社全体としての総合力を発揮しにくくなりがちだ。三菱電機はそんな悪循環に陥らないように、部門間の壁を取り払った「連携力」で次の成長の種をまき始めている。

三菱電機の設備を入れて省エネ効果を引き出した宝輪(三重県鈴鹿市)の津営業所の内部や外観
消費エネルギーを77%削減
●宝輪の津営業所における省エネ効果
注:基準値を100とした場合

 トラック運送事業を営む宝輪(三重県鈴鹿市)が2018年に実施した省エネ改修工事。県内の津市にある津営業所でエアコンや照明器具、換気装置などを入れ替えたことで、国が定める省エネ基準値を50%超上回る省エネ効果を引き出した。さらに太陽光発電システムの設置で、実質的なエネルギー消費量を基準値の23%まで低減させた。

 電気代の節約につながる省エネ対策を提案し、必要な設備を納めたのが三菱電機だ。ビルなどの消費エネルギーを減らす「ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」事業として取り組んだ。

 ZEBは08年7月の洞爺湖サミット(主要国首脳会議)で国際エネルギー機関(IEA)がZEB普及の取り組みを加速するよう勧告したのをきっかけに脚光を浴びるようになった。国内では政府が14年の「エネルギー基本計画」で「20年までに新築の公共建築物でZEBの実現を目指す」などの目標を掲げ、補助金を出して普及を後押しする取り組みを本格化している。

 民間調査会社の矢野経済研究所(東京・中野)によれば、ZEBの国内市場は30年度に約7060億円と、15年度の40倍の規模になる見込み。清水建設や大成建設、日建設計といったビル建設関連企業が需要の掘り起こしに力を入れる中、電機大手の三菱電機が存在感を高めている。これまでに関わったZEB対応ビルは30件ほど。「ZEBを検討したい」という相談は16年以降で約250件に達している。

日経ビジネス2019年9月2日号 72~76ページより目次