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LNG(液化天然ガス)分野で世界屈指の実力を持つプラントエンジニアリングの国内最大手。競合各社が建設工事で巨額損失を出し経営危機に陥る中、納期順守を徹底し安定した経営を誇る。プロジェクトの成功を優先し海外の合弁相手の業務にも口を出すなど、リスク管理を担う人材育成に執念を燃やす。

ロシアのLNGプロジェクト「ヤマル」ではモジュール工法を採用した。中国やインドネシアなどでモジュールを作成し、船でロシアの地に運んだ(右)

 韓国・釜山から車で1時間ほど走った巨済島にあるサムスン重工業の造船所。広い敷地内で建設が進むのは、日揮とサムスン重工が建設する浮体式LNG(FLNG)設備だ。

 2014年にマレーシアの国営石油会社ペトロナスから受注したこの設備は、船の上に液化プラントを設置したもの。完成後はマレーシア沖に運ばれ、海底から引き揚げた天然ガスを船上で冷却して液化する。全体の受注額は2000億円を超える巨大プロジェクトだ。

 船の全長は333mで、海面からプラントの最上層までの高さは20階建てのビルとほぼ同じ。陸上のプラントに比べ4割ほど狭いスペースに必要な設備を押し込まなければならない。海上での揺れに耐え得る堅牢性も求められる。世界では4例しか事例がなく、うち2例を日揮が手掛ける。ペトロナスの案件の全体をまとめる日揮の小沢智樹プロジェクトダイレクターは「パートナー企業との連携も含め難度が最も高い案件だ」と話す。

競合他社は軒並み経営難

 世界ではこうした総額1000億円以上の巨大かつ複雑なプラントが増えている。下の地図は、国内のプラントエンジニアリング大手3社が17年4月から現在までにEPC(設計・調達・施工)を手掛けた大型案件を配置したもの。世界各地で多くのプロジェクトが進んでいることが分かる。

日揮は1000億円以上の大型プロジェクトを各地で展開
●専業プラント会社が世界で手掛ける大型プロジェクト
注:各社への取材を基に日経ビジネス作成。2017年4月から現在までに受注および遂行した1000億円以上のプロジェクト。円の位置は最終建設地。金額はプロジェクト全体の規模で各社の受注額ではない

 こうした大型プロジェクトは受注額が大きく成功すれば収益への貢献が大きい半面、工事期間が長期化し損失が発生するリスクも高くなる。

日経ビジネス2019年8月26日号 54~58ページより目次