2016年までの4年間で売上高が4割落ち込むなど、不振にあえいでいた「メード・イン・アメリカ」の代表企業。だが、この2年で業績は復活を果たした。需要回復の「追い風」は確かにあったが、見逃せないのが利益率の上昇。同じ売り上げ規模の年と比べても、今の方が利益率は高い。収益改善の裏には独特のコスト管理手法があった。

●2014年から18年にかけての4年間で57工場を閉鎖もしくは統合 |
●全体で1万人以上の総労働力を削減。その結果、人員は14年の11万5600人から18年の10万1500人に減少 |
●15億ドルの運用コスト削減のうち、半分は販売費および一般管理費の減少で実現 |
●残り半分の運用コスト削減は、20を超える施設および製造面積の10%超に影響を与えるとみられる施設の統合および閉鎖による節約、製造期間の短縮によるもの |
「この2年で、私たちは驚異的なパフォーマンスを達成した」
5月2日、米ノースカロライナ州クレイトンに誇らしげにこう語る米キャタピラーのジム・アンプレビーCEO(最高経営責任者)の姿があった。この日はキャタピラーが年に1度、株主や投資家を招いて開く説明会。アンプレビーCEOは2016年に390億ドル(約4兆2000億円)だった売上高を18年に550億ドルまで引き上げた業績をアピールした。
中でも胸を張ったのが、利益率だ。18年の売上高営業利益率は16%と直近のピークの12年(15%)を上回った。同じ売り上げ規模だった14年と比べると、5ポイントの上昇だ。「私たちの戦略が正しかったことを示している」。アンプレビーCEOはそう強調してみせた。

1925年創業で、建機世界最大手のキャタピラー。2016年に大統領選の共和党候補だったトランプ氏が「キャタピラーの建機でメキシコに国境の壁をつくる」と演説でぶち上げたように、キャタピラーは米国の製造業を代表する老舗企業だ。
だが、そんな同社もつい数年前まで業績低迷に苦しんでいた。16年までの4年間で売上高は4割落ち込み、16年には24年ぶりの最終赤字を計上した。
12年からの資源価格の下落と新興国経済の停滞で、主力の鉱山機械や建設機械の需要が低迷したことが原因だ。10年にCEOに就任したダグ・オーバーヘルマン氏が鉱山開発やインフラ整備が盛んな中国やブラジルなどの新興国で建機需要が膨らむとみて、積極投資したことも裏目に出た。売り上げの減少に歯止めがかからず、投資回収もままならない。キャタピラーは低迷する米製造業の象徴的な存在だった。
業績不振の責任を取って16年末に退任したオーバーヘルマン氏の後を継いだのが、エネルギー・輸送部門のトップだったアンプレビー氏だ。
同氏が幸運だったのは、17年から資源価格が回復し始め、再び新興国を中心に鉱山開発が活発になったことだ。米国ではシェール開発のプロジェクトが相次ぎ、掘削機械の需要が拡大したこともキャタピラーの業績を後押しした。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り5148文字 / 全文6421文字
-
「おすすめ」月額プランは初月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員なら
人気コラム、特集…すべての記事が読み放題
ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「ケーススタディー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?