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九州発のディスカウントストアがITを駆使し、新しい店づくりを進めている。自前で開発したセルフレジ機能付きカートを導入し、店内はカメラやディスプレーを張り巡らせている。効果は省人化にとどまらない。大手メーカーがデータを集めようと詰め掛け、売り場づくりでの協力が強まっている。

店内のパネルは同時に同じ広告を表示することも。レジカートの利用率も高い(福岡県新宮町)(写真=林田 大輔)

 福岡市中心部から北九州方面に車で30分ほど。福岡市のベッドタウン、福岡県新宮町に4月中旬、ITをフル活用したトライアルの実験店「メガセンタートライアル新宮店」が改装オープンした。1万1900m2の店内にセルフレジ機能を持つ「スマートレジカート」が200台、買い物客や棚の様子を録画する分析用カメラが1500台、個別の客の嗜好に応じた広告を表示するデジタルサイネージが210台、それぞれ配置されている。

 スマートレジカートは10インチのタブレットとバーコードスキャナーを備えた。プリペイド機能付き会員カードをかざしてIDを確認。商品のバーコードをスキャンすると、かごの中の合計金額が表示される。画面上の「会計」ボタンをタッチし、価格や使用ポイントを確認すれば、プリペイドカードの残高から引き落とされる。店内のどこにいてもセルフで会計を終えることができる仕組みだ。

 「並ばなくて済むのがいい。混んでいるときはレジで10分くらい待つこともあったから」。改装前から週3回ほど来店する近所の主婦(67)が買い物の様子を見せてくれた。持参した買い物袋の一つをカートの上に広げ、保冷バッグをハンドルに引っ掛けて店内を回る。スキャンした後、冷蔵品は保冷バッグに、野菜や日用品は買い物袋に入れていた。こうすれば会計後にまとめて商品を移し替える手間も省ける。来店客が自分でスキャンしながら歩き回る姿は従来の食品スーパーやGMS(総合スーパー)では見られない光景だ。

 1974年に創業したトライアルホールディングス(HD)は九州を地盤に関東や北海道、東北を含め全国に234のディスカウント店や食品スーパーなどを展開している。東京に店舗がないため東日本での知名度は高くないが、売上高(トライアルHD)は2019年3月期で4370億円。大手食品スーパーのヤオコーとほぼ同じ規模を持つ。

 レジカートは九州の店舗から順次取り入れており、店員がいるレジに並ばず、レジカートを使う比率は新宮店で3割、18年に導入したアイランドシティ店(福岡市)で4割になった。内製によりコストを1台10万円程度に抑え、これまでに15店で1500台を導入済み。ソフトウエアはトライアルが自ら組み、ハードも自社設計して、中国・深圳で委託生産している。セルフスキャンのカートは東芝テックの製品をイズミが広島県の店舗に取り入れているが、内製品によるトライアルの取り組みは規模が大きく、小売業界の注目度は高い。

日経ビジネス2019年7月1日号 58~61ページより目次