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作業服販売大手でFCを中心に店舗網を広げるワークマンが、8期連続で最高益を更新している。背景にあるのは、本部と店舗が一体となって進める時短のような効率化に向けた取り組みだ。建設需要が先細ることへの危機感は強い。アウトドアウエアという新業態を軸にブランド化も進めている。

ワークマンの足立区役所前店。朝6時から建設業の作業員が立ち寄る(写真=陶山 勉)

 東京都の北東部、日光街道に面したワークマン足立区役所前店(東京・足立)。5月上旬に訪れると中西千賀子店長が接客とレジ打ち、品出しを繰り返していた。軍手や作業服を隙間なく並べた店内には、数人の客が常時滞在しているが、従業員は店長を含めて2人しかいない。お昼前後と閉店前の時間はパート従業員を増やすが、最も多い時間帯でも3人体制だという。

 作業服や工事現場用品を販売するワークマンの840ある店舗の中でも、足立区役所前店は売り上げが大きい。それでも働くのは中西氏とパート従業員4人の計5人。シフトを組み合わせながら約100坪の店舗を夜8時まで運営する。ワークマンの店舗の9割がフランチャイズ(FC)で、オーナー夫婦を中心にごく少数で運営する店も多い。

 コンビニエンスストア最大手のセブン-イレブン・ジャパンの1店舗当たりの平均売上高は年間2億3000万円程度。営業時間や商品単価が異なるので単純比較はできないが、ワークマンは1億2000万円ほどだ。1店舗20人程度の運営が多いコンビニ業界に対し、ワークマンを4人とすると、1人当たり売上高は3倍に迫る計算になる。

 少人数で運営できるのは多くの店舗で営業時間が午前7時から午後8時に限られるうえ、弁当を温めるような煩雑な作業がない店舗モデル故ではある。しかし、それだけではない時短の工夫からは、FC運営こそがビジネスの根幹だという本部の意向がうかがえる。

 「業務に必要なデータを自分たちで分析して売れ筋を読む。店舗の発注業務の負担を減らしたい」。スーパーバイズ(SV)部需要予測発注グループの平野貴行氏は言う。小売業界の発注システムでは店舗側が数量を決めることが多く、ワークマンも地域を回るスーパーバイザーと店長の勘や経験に頼っていた。2017年から、本部側が発注量を推奨するシステムに徐々に切り替えており、店舗はPOSレジやタブレット端末を通じて承認する。

 本部は16年に新システムの構築を始めたが、ほとんど投資しなかった。汎用的なシステムを1億円ほどで購入。需要予測のアルゴリズムを自社開発するなどカスタマイズを進めていった。データ分析担当者も研修を通じて成績優秀者を選抜して社内で育成している。

 発注量を決める主体を店舗でなく本部にするという発想の転換は、作業服販売というビジネスだからできたという。商品のライフサイクルが長く、全国一律でほとんど同じ商品を売るため販売データを蓄積しやすい。流行に左右されにくく、売れ残っても翌年まで持ち越せばいいので原則として値引き販売をしない。同じ条件、同じ値段で売り続けるためPOSから集めるデータを使うと高い精度で販売予測ができた。

身近な業務にデータを生かす
●ワークマンのデータ活用の骨子
(写真=陶山 勉)
日経ビジネス2019年6月17日号 54~57ページより目次