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農業機械国内最大手だが、実は東南アジア諸国連合(ASEAN)でも高いシェアを持つ。競合より進出が早かったことも奏功しているが、先駆者という立場だけでシェアを維持できるほど甘い市場ではない。どう市場での高いシェアを守るか。徹底するのは顧客に対するきめの細かなアフターサービスだ。

稲作が盛んなメコンデルタ地域では、クボタのトラクターやコンバインが活躍していた(写真=2点:川床 和代)

 ベトナム南部メコン川の下流に広がるメコンデルタ地域。豊富な水資源と温暖な気候を生かして年に3回の稲作が可能な世界有数のコメの生産地として知られる。その広大な水田を耕すのがオレンジ色が特徴のクボタのトラクター。その奥ではクボタのコンバインが稲の収穫作業を進めていた。

 「他社の機械も使ったが、クボタが一番いいね」。こう話すのは、クボタのトラクターを2台所有する農業歴22年というレ・バン・チェン氏。同氏は自ら保有する農地だけでなく、お金をもらって他の農家の田んぼも耕す。耕作面積は実に年300ヘクタール超。東京ドーム60個以上の広さに相当する。

 これだけの水田を扱うとなれば、農機に対する要求水準は高くなる。レ氏は「性能や耐久性はもちろんだが、サービスの対応も速い。クボタ以外の機械を使うことはもう考えられないよ」と絶賛する。

 クボタの農機が東南アジアで支持を集めている。クボタが進出している国はベトナムやタイ、ラオスをはじめ7カ国(下図参照)。2017年の新車トラクターの販売シェアでは、うち5カ国で70%以上を誇る。シェアが3割程度のミャンマーやインドネシアでもトップの座にある。18年12月期に1兆8000億円を超えたクボタの連結売上高のうち、日本を除くアジア地域の比率は18.1%にまで高まった。

東南アジアで圧倒的なシェアを持つ
●クボタが進出している国と2017年の新車トラクターのシェア
注:シェアの数はクボタ調べ

 経済成長による所得水準の向上で食料需要が拡大する東南アジア。都市化の進展で農村部では今後、農業従事者の不足も顕在化していく。そうした中で高まる機械化ニーズをクボタはいち早く取り込んできた。

 最初に進出をしたのはタイだ。1970年代に日本から田んぼや畑を耕す耕運機を輸出して販売する現地事務所を開設。78年には地元財閥企業と合弁会社を設立し、耕運機と農業用ディーゼルエンジンの現地生産にも乗り出した。

日経ビジネス2019年5月27日号 58~62ページより目次