競争激化の一途をたどる国内の格安スマートフォン(スマホ)市場で健闘している。ユーザーとの交流をとことん重視する戦略が奏功し、口コミや友人の紹介で契約数を伸ばす。コアなファンの意見や知見はサービスの改善にきっちり役立てる。ユーザー囲い込みの極意が同社にはある。

<span class="fontBold">格安スマホサービス「マイネオ」の熱心なファンを集めて桜の植樹イベントを開催(上)。右写真はマイネオの販売店</span>(写真=村上 昭浩、以下同)
格安スマホサービス「マイネオ」の熱心なファンを集めて桜の植樹イベントを開催(上)。右写真はマイネオの販売店(写真=村上 昭浩、以下同)

 3月9日午後1時。宮城県仙台市内の「杜の広場公園」で、ちょっと不思議なイベントが開かれた。緑色のビブスを身に着けた一団が、敷地内や周辺でゴミ拾いに精を出したり、桜の若木をスコップで植えたり。一見すると地域のボランティア活動やCSR(企業の社会的責任)活動のようだが、そうではない。

 主催したのは格安スマートフォン(スマホ)サービス「マイネオ」を手掛ける関西の通信会社、ケイ・オプティコム(大阪市)だ。この日のイベント参加者は10人。年齢層も職業もばらばらだが、全員がマイネオを利用する熱心なファンだ。ケイ・オプティコムから交通費の支給はないが、中には東京や千葉から駆けつけた人もいる。

 「マイネオ・グリーン・プロジェクト」。こう銘打ったイベントは今回が2度目で今後、全国に広げる予定だ。ただ、主催者が単にユーザーに呼びかけて開催するわけではない。熱心なファンが増えてこその「仕掛け」が施されている。

 まず、イベントが開かれるにはケイ・オプティコムが運営するサイト「マイネ王」でユーザーが頻繁に発言する必要がある。同サイトの掲示板ではマイネオ利用者がニックネームを使ってスマホの使い方などに関する疑問から「ランチに何を食べたか」まで幅広いテーマでコメントしている。

 ケイ・オプティコムは、こうしたユーザーのコメントから「ありがとう」「助かりました」「ナイス!」といった言葉や、笑顔を示す顔文字などを常に計測し、それが一定量に達すると、各地の公園で「桜の植樹」を実施する。利用者がオンラインで積極的に交流すればするほど、植樹というリアルの“成果”に結びつく。そうやってコミュニティーをより活性化させるわけだ。

 もっとも、こうしたコミュニティーサイトやイベントの運営には人手もカネもかかる。それでもケイ・オプティコムは手間を惜しまない。

 背景には格安スマホ市場を巡る厳しい現状がある。総務省によると、国内の携帯電話など移動通信サービス市場(契約数ベース)のほぼ9割をNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社が牛耳っている。残り1割が格安スマホ事業者の市場だが、ここには実に1000社近くがひしめいている。ケイ・オプティコムはそんなレッドオーシャン(激戦市場)に身を置いている。

市場の1割強に1000社近くがひしめく
●携帯電話など移動通信サービスの規模
(2018年9月末時点、総務省調べ)
市場の1割強に1000社近くがひしめく<br><small>●携帯電話など移動通信サービスの規模<br>(2018年9月末時点、総務省調べ)</small>
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 そもそも格安スマホ事業は、通信料金も端末も「コモディティー(汎用品)化」しやすい構造になっている。各社とも大手に支払う回線の「レンタル料」がサービス原価の大半を占めており、その料金は基本的に貸出先によらず一定だ。かつては業界最安値を10円単位で競いながら市場を急速に広げたが、同じ仕入れ原価での料金競争は限界に来ている。端末の品ぞろえにしても、各社は通信会社を自由に選べる「SIMフリー」の端末を、主に日本や中国などのメーカー数社から調達するから、差異化を図りにくい。

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