前には「1000万台クラブ」がそびえ、後ろから新興のテック企業が迫る。はざまに立った独BMWは、競争環境の激変をどう勝ち抜くのか。従来の開発手法は全てやめる。スピード重視の全社改革が始まっている。

 ドイツ南部バイエルン州ミュンヘン。独自動車大手BMWが本社を置くこの街の郊外に、次代のBMWの土台を支える研究施設がある。外光を取り入れる大きなガラス窓と白い壁が映えるこの施設。同年4月に完成したばかりだが、昨年末に訪れると、拡張工事が続いていた。最終的には2万3000m2の広さの建屋に約1800人が集まるという。技術革新のスピードが速い自動運転分野で世界に負けない体制を作る。そんな野心を映し出しているかのようだ。

 施設の地下ではBMWのバッジをつけた自動運転車が8台並んでいた。クルマの目となるカメラを1台あたり8個搭載し、ここから集まる情報を基に周囲の状況を判断、自動運転を実現するという。

 BMWが目指すのは、21年に人が運転に介在しない「レベル4」の自動運転車を市場導入すること。「エンジン車でも最先端技術を導入し続けたように、自動運転車でも業界をリードする」。ハラルト・クリューガー社長は意気軒高だ。

 世界の自動車大手がしのぎを削る自動運転。センサーやAI(人工知能)などの技術の進化が、人手を介さなくても目的地にたどり着く新たなモビリティーの実現を後押しする。研究を進めるのは既存の自動車メーカーだけでない。米グーグルや米アップル、中国・百度(バイドゥ)などIT(情報技術)の巨人も開発を急ぐ。さながら異業種格闘の様相を呈する中で、BMWはどう生き残るか。

 BMWの源流は1916年に創業した航空機エンジンメーカーだ。22年に社名をBMWに改称したが、それもドイツ語でバイエルンのエンジンメーカーという意味。独特のエンジン音をどんな車種の運転席でも同じように聞こえる設計を施すなど、自動車大手の中でもエンジンに対するこだわりは強い。ミュンヘンの本社のビルの形状は円筒形。それもエンジンシリンダーをかたどっているという。そんなエンジン屋としてのこだわりで、世界の「カーガイ」の心をガッチリとつかんできた。

 だが、これまで培ってきた技術やノウハウだけでは100年に1度といわれる大変革期を乗り越えられない。今、自動車業界で起きているのは既存の業界秩序の崩壊だ。電動化や自動化、デジタルサービスではソフトウエアの開発力に秀でるテック企業が台頭する。

 BMWも他の巨大メーカーと同じように、もしくはそれ以上にエンジンなど動力系のエンジニアの意向が強く、業界に押し寄せるデジタルシフトの波に乗れずにいた。長い歴史を誇るからこそ自前主義もなかなか捨てられない。

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