(写真=山下 裕之)
(写真=山下 裕之)

 創業84年目の2021年4月に東証に上場してから、1年と少したちました。上場した理由は、100周年を迎えるにあたりグローバル企業へと転換するためです。上場で得た資金を使い、日本の伝統食品として水産練り製品を広めようと考えているところです。

 会社として新しい道に踏み出している今のようなときは特に、一人ひとりが自分の役割をしっかり考えることが大切です。私がそうしたことを身に染みて感じたのは、40代のときのこと。中部地域のマーケティング担当から、沖縄県の海洋食品へ5年間出向したころです。海洋食品は沖縄資本との共同出資会社でした。

 「責任者を呼べ」。創業家出身の会長が沖縄を訪れた際、海洋食品のはんぺんに激怒しました。東京本社がCMを使ってキャンペーンを打っている製品と、パッケージは全く同じなのに、中身が違うという理由でした。沖縄では、石臼ですった山芋を混ぜ、自然に生まれる気泡を含む製品だった。一方、キャンペーン製品は製造過程でさらに空気を含ませ、ふんわりした口当たりのものだったのです。会長の怒りの2カ月後、私は海洋食品常務から本社の課長へ異動させられました。

 私はキャンペーンを実施中だと知らなかった。そのとき自分で問題だと思ったのは、なぜ知らなかったのだろうか、ということです。会長が来ることも知らなかった。なぜなのだろう、と。