常に意識した「北極星」 3歩進もうとして 3歩退いてもゼロではない

(写真=都築 雅人)
(写真=都築 雅人)

 1980年に大蔵省(現財務省)に入省し、約37年間の行政官人生でした。90年代を境に日本の経済社会は構造的に変容し、行政官を取り巻く環境も大きく変わりました。政策立案に発想の転換が求められる中、支えとなる言葉や人との出会いに恵まれました。その一つが、かつて上司であった小川是さん(元大蔵事務次官)がふと口にされた「北極星」です。

 小川さんが主税局長、私が同局の若手課長補佐時代のことです。ある日、局長室で私は小川さんから「君の税制の北極星はどこにあるの?」と問いかけられたのです。答えに窮していると、小川さんはこう続けました。

 「大切なのは本質を見極めることだ。足元も大事だが、その先の北極星を見定めて、そこから逆算して深く考える視座がないと漂流するぞ」

 要は目先にとらわれずに社会経済構造全体を見渡しながら大きな政策的枠組みを描き出していくことが使命だと示唆されたのです。以来、あるべき姿や方向性などを指す「北極星」という言葉は私の心の羅針盤になりました。

 それが生かされたのが、2011年に発生した東日本大震災への対応です。当時、私は政府の復興構想会議で事務局の取りまとめ役でした。復興の方針と輪郭を描くために設けられた会議でしたが、当初はまさに議論百出。そこで私が提案したのが、「復興構想7原則」をまず固めるというアイデアです。復興構想の本質、つまりこの問題の北極星を共通認識とするためでした。