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事業で成功したのに病で倒れた私を救い、立ち直らせたもの

(写真=山中 浩之)

 IT社会を支える半導体。集積度の高いチップの製造には、原料のシリコンウエハーの表面を平滑に磨き上げねばなりません。フジミインコーポレーテッドは、我が国の精密人造研磨材メーカーのパイオニアで、光学レンズ、ハードディスク、そして半導体基板の鏡面研磨などで、世界でも指折りのシェアを持つ企業になりました。

 戦前に父が創業した当時はタイルメーカーでしてね。海軍に「仕事ないですか」と聞きに行ったら、潜望鏡や双眼鏡のレンズの研磨材を作ってくれと。そこで、「分級」というんですけれど、磨きに使う細かな粒子の大きさをそろえる技術を教えてもらい、工場を作り竣工式をやって、その翌日が終戦です(笑)。

 戦後、朝鮮戦争で米軍から光学機器の修理依頼がどっと来て研磨材の需要が盛り上がったころ、東京通信工業、今のソニーから「用途は言えないが、これこれの研磨材は作れるか」と打診がありました。ラジオ用のトランジスタ製造が目的だったんですね。この辺から現在に至る半導体向けの需要が急増します。

 私も仕事が好きでしたし、大学の先生と議論し、論文を読みあさって素材のヒントを得たり、電子顕微鏡をいち早く導入したり、自分たちなりに努力を重ねてきました。CMP(化学的機械研磨)というんですけど、化学変化の力も借りて「溶かしながら均らす」という考え方をいち早く取り入れたのが、成功の要因だったでしょうか。効率が猛烈に上がって、30時間がかりだった作業が10分で終わる。