組織は個人が源泉 人々の行動を促すのがリーダーの役割だ

 箱根駅伝に例えれば、2区を走り切って役割を果たしたとほっとしているところで小田原に連れていかれて、5区の山登りに挑む気分でした。2016年1月、1年8カ月ぶりにイトーヨーカ堂の社長に復帰した時の心境です。

 イトーヨーカ堂は16年2月期に約140億円の営業赤字に転落しました。上場以来初の赤字に陥ることが確実となり、7年余りの社長業務を終え、顧問となっていた私が呼び戻されました。

 企業経営とはつくづく難しいものです。社長から離れていたわずか2年弱の間に、現場はすっかり変わっていました。企業にとって大切な倫理面についても問題がある状態でした。

(写真=竹井 俊晴)
(写真=竹井 俊晴)

 よく「ピンチはチャンス」といった言い方をしますが、私は同意できません。やはり「ピンチはピンチ」でしかない。努力してピンチの状態をチャンスに変えるしかないのです。従業員にもこの話をして危機感を共有しました。

 さらに赤字脱却のため、私は「倫理規範は、必ず守る」「利益を重視し、業務を進める」「モノを言える社風にする」など10カ条の方針を打ち出しました。私自身も「失敗しても部下のせいにしない」「好き嫌いで人を動かさない」など戒めをつくりました。

 なかでももっとも重視したのが従業員とのコミュニケーションです。顔をつき合わせて、話し合うことを心がけました。当たり前のことと思うかもしれませんが、これがなかなか難しいのです。

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