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試される「51:49」の決断  ベストの情報と経験あれば M&Aでも悩まない

(写真=陶山 勉)

 経営者の器が最も試されるのが、「51:49」の決断です。「7:3」や「6:4」でどちらが正しいかが見えていれば、担当する役員が決めればいい。答えがはっきりしない状況でも自信を持って勝負できるのが本当の経営者ではないでしょうか。

 それは決して、さいを投げるわけではありません。自ら現場を歩いて集めた情報と、ブレない価値観に基づいていれば、悩むことはないはずです。

 多くの経営者が難しいと考えるのがM&A(合併・買収)でしょう。大きな金額を投じるのに、100%成功する保証はないどころか、失敗するほうが多いくらい。

 2015年、英国のマイラという自動車の開発支援会社を買収しました。立派なテストコースを持ち、アストン・マーチンやジャガーなど英国車向けで実績のある名門でした。

 ただ排ガスの測定装置を主力とする堀場とは分野が少し違い、必要な買収金額が大きかったので、うちの役員でも慎重論が大半でした。私が視察から戻って「買収するから」と伝えたら、「殿、ご乱心を」と言われたくらいです(笑)。

 のれん代の金額が大きく、帳簿だけで判断するなら絶対に買ってはいけない会社でした。それでも即決できたのは、600人もの優秀な技術者がいたからです。この人たちが加わってくれるなら、決して高くないと。

 想定外だったのは、買収直後に英国の欧州連合(EU)離脱問題が起きたことです。注文は減りましたが、研究開発費を絞ることは考えませんでした。分析・計測機器の分野はどれだけ技術のポテンシャルがあっても、1年や2年で成果は生まれません。ですから最低でも買収額と同じ金額をその会社に投資する、と決めています。

日経ビジネス2019年6月3日号 9ページより目次