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どこに座るかは問題でない そこに座り何を考えるか 使命はおのずと見えてくる

(写真=陶山 勉)

 鳥取県米子市の今井書店グループを、5代目経営者として従兄弟と3人で経営してきましたが、2018年1月、当時41歳だった現社長に経営を託しました。今井書店は、シーボルトが開いた長崎の鳴滝塾で学んだ医師、今井兼文が1872年に開業したのがルーツです。初代は長崎に世界を見て「これからは教育が大事になる」と思い、私塾も開いていました。

 私は長男で、家業を継ぐという周囲の期待を自覚してはいましたが、すんなり継いだわけではありません。早稲田大学に学び体験を重ねるうち、さらに学びたいと思うようになり、新聞配達や家庭教師をして費用をため、大学院進学の準備をしていました。

 ところが1965年、当時父が今井書店とは別に社長を務めていた教科書販売会社の、鳥取市の取引先が破綻しました。このままでは子供たちに教科書が届かないかもしれないから、手伝ってもらえないか──。上京してきた両親にこう説得されました。応じて帰郷すれば、いずれそのまま家業を継ぐことになる。眠れぬ夜を過ごす中、師事していた早稲田大学の川原栄峰教授に「どこに座るかは問題ではなく、そこに座って何を考えるかが問題だよ」と諭され、人生の転換を決めました。