現状を変えようと考える そうすれば誰からでもイノベーションは生まれる

(写真=北山 宏一)
(写真=北山 宏一)

 私は2000年代に8年間、上場企業同士のM&A(合併・買収)に伴う組織統合マネジメントのお手伝いをしてきました。PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)、買収前後の統合作業ですね。当時は統合を成功させるポイントはコストカットと思われていて、いかに組織や人事を融合するか、という発想は乏しかった。投資家が短期的な業績で評価する傾向が強かった時代ですから、無理もありません。

 そこに、いかに企業文化を融合し、より良い組織を作るかという仕事をしていました。統合して効率化することは間違いではありません。でも、コストを減らし、人を減らしていくだけでは売り上げは伸びない。利益は増えても、トップラインが伸びないと、いずれ疲弊します。

 こんなことがありました。経営統合を対外発表する直前、一方の会社側が統合の全面撤回を申し入れたいと言い出した。「対等の精神と言っているのに、こちらの立場を尊重してくれない。あまりにも無礼だ」と交渉担当者らが言うのです。何のために統合するのか。資本の論理を盾に大が小をのみ込む発想ではうまくいくはずがない。

 そうした統合現場をたくさん経験する中でPMIの「I」はインテグレーションだけではダメだと思い始めました。単に2社が1社になるのではなく、そこから新しい価値を生み出さない限り、企業は成長しないと。

 新しい価値を生む。それは、イノベーションを起こすことに他なりません。PMIにはイノベーションという、もう一つの「I」が必要なのです。インテグレーションにイノベーションを加えたPMIIこそが統合を成功させる秘訣。そう考えるようになりました。