次の時代に大切なのは 解決までの時間を耐える ネガティブ・ケイパビリティ

(写真=栗原 克己)
(写真=栗原 克己)

 科学史や科学哲学に私が取り組むようになってから、60年ほどになります。この分野においてこれまで様々な研究をしてきました。最近特に注目しているのが「ネガティブ・ケイパビリティ」です。

 この言葉は、問題が起きた時に解決策にすぐに飛びつくのではなく、「本当にこの解決策でいいのだろうか」と考え直したり、「実は別の解決策があるのではないか」と検討したり、「そもそも今問題と思っていることは、問題ですらないのかもしれない」と考えたりする能力を指します。

 問題が未解決のままいろいろなことを考えますから、ネガティブ・ケイパビリティは「解決に至るまでの時間を耐える能力」ともいえるでしょう。もともと英国の詩人、ジョン・キーツから始まり、同じ英国の精神医学者であるビオンが医学分野に応用しました。私は精神科医で作家の帚木蓬生さんの著書『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』で知って以来、この言葉が心に刺さっています。

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