2010年代からのカレーブームをけん引し、素材にこだわったレトルト食品づくりで注目される。2度の事業転換を成し遂げたのは、先代社長に請われて転職した、印刷会社の営業社員だった。

国民食としての地位にありながら、形を変えてブームを繰り返すところが日本のカレー市場の面白さだ。ここ最近でも南インドカレーや大阪スパイスカレー、ネパールの定食ダルバートなど新たな役者が続々と登場している。

にしき食品は、本格的な南インドカレーをレトルト商品としていち早く世に送り出した、現在のカレーブームの立役者の一人。本場の味そのままに次々と新商品を開発し、多くのカレーマニアをうならせてきた。業界で一目置かれる、高付加価値のレトルト食品メーカーだ。
小さな佃煮店から事業転換
家族経営の佃(つくだ)煮店だったにしき食品を、年商約70億円の食品メーカーに育てた菊池洋社長は、創業家出身でないばかりか、食品とは一見縁のない、印刷会社の営業担当だった。
1973年に山形大学を卒業して都内の大手印刷会社に就職。当時はレトルト食品が花盛りで、菊池社長は営業職としてレトルト包材から生産設備までを売り歩く日々を送っていた。営業先の一社が、自身の地元・宮城県のにしき食品だった。食生活の変化で佃煮の売り上げが落ち込む中、レトルト食品に活路を求めて、社会人2年目だった菊池氏から殺菌装置などを購入した。
ただ、どんな商品を作るのか明確なビジョンはなく、設備投資が重くのしかかるばかり。「うちに来て助けてくれないか」──。父親ほどの年代の先代社長から何度も頭を下げられたのにほだされ、殺菌装置を売ってから6年後、従業員4人のにしき食品に転職。事業転換の陣頭に立った。
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