特別定額給付金の申請書を効率処理するため、全国の自治体がこぞって導入したサービスを開発。圧倒的な精度の「AI-OCR」ができた背景には、創業社長の綿密な計画と、徹底した研究があった。

99%以上の精度で書類の文字を読み取る
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従来のOCRでは難しかった手書き文字にも対応。訂正印が入った文章でも高精度で読み取り、金融機関などに納入している(写真=北山 宏一)

 1人10万円の特別定額給付金の配布が決まった2020年4月以降、膨大な手書きの申請書類を処理する自治体がこぞって導入したサービスがあった。AI inside(東京・渋谷)が開発した「DX Suite」だ。

 AI(人工知能)を搭載したOCR(光学的文字認識)で書類を読み取りデータ化するサービスで、給付金事業をきっかけに申し込みが急増。これまでに500以上の自治体が導入した。

 同社の渡久地択社長CEOは、「12年にディープラーニング(深層学習)に関する研究成果が発表されてから地道に研究開発を重ねてきた。精度でも使いやすさでも当社に勝るものはない」と自信を見せる。

精度99%で手書き文字を認識

 書類を読み取って自動でデータ化するOCRは古くからある。業務効率化の切り札として期待されていたが、文字認識精度の低さなどからなかなか普及には至っていなかった。

 だが近年になって、AIと組み合わせることで読み取り技術を飛躍的に向上させたAI-OCRが次々に出現。その中でもAI insideの市場シェアは、複数の調査会社が6割程度と算出しており、トップだ。

 同社の強みは、手書き文字も読み取れること。手書き文字は崩れていたり、間違えた箇所が黒く塗りつぶされていたりして、読み取りが難しい。それでも同社は、99%以上の精度で読み取ることができ、競合に差をつけている。

 AI insideのサービスを利用しているリコーリースの担当者は、「読み取り後の修正がほとんどなく、途切れている文字でも推測して読み取ってくれる」と話す。同社ではデータ入力の担当者の数を導入前に比べて3分の1に減らし、別の業務に振り向けることができるようになったという。

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