ポスターやポップ(POP)といった店頭販促物の企画制作・印刷・配送をワンストップで手掛け、「構造不況業種」とされる印刷業界でも右肩上がりの成長を続けている。中小印刷業から、デジタル化で発生する面倒ごとを一手に引き受けるフルサービスカンパニーへと変身する過程を追った。

ジーンズにラフなジャケットを羽織った40代社長が率いる成長企業。社員の平均年齢は29.6歳で、スタイリッシュなオフィスには女性の姿も目立つ。こう聞いてどんな会社を思い浮かべるだろう。IT? スタートアップ? いずれも違う。正解は1946年創業の中小企業。しかも構造不況業種の代表格とされる印刷業だ。
経済産業省の統計によれば、ピークの91年に8.9兆円だった印刷業の出荷額は、2018年には4.9兆円まで落ち込んでいる。大まかに言えば「30年で市場が半減した」業界にあって成長を続けるのが水上印刷だ。大手コンビニチェーンや携帯キャリアを大口顧客に抱え、ポスターやポップ(POP)といった店頭販促物の企画制作・印刷・配送をワンストップで手掛け、10期連続の増収を達成、利益を3.5倍に伸ばしている。
東京・西多摩のJR五日市線沿線。駅から車で10分ほど走ると、真新しい戸建て住宅が行儀良く並び、ロードサイド店舗が軒を連ねる。ところどころに畑も残る新興住宅地に立つ1軒のコンビニが、水上印刷が15年間歩んだ経営改革を象徴する。どういうことか。経緯を遡って説明しよう。
デジタル化で売上高の2割が蒸発
水上印刷は06年、経営危機に直面した。当時、売上高の2割を占めていた写真フィルムのパッケージが、デジタルカメラの普及で製品ごと消えてなくなったのだ。
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