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現場に口出しせず放置し、自主性を重んじる経営で10年連続の増収増益を達成した。老舗を継いだ若き経営者が独特なマネジメント術を生み出した背景には、ある異色経営者との出会いがあった。

多様な産業用刃物を手掛ける
福田刃物工業は段ボールや鉄鋼などの加工機、ペットボトルや廃タイヤ、木材などの粉砕機に取り付ける刃物を製造・販売している

 「刃物の街」として知られる岐阜県関市の福田刃物工業は、1896年創業の刃物メーカーだ。ポケットナイフ作りが祖業で、現在はペットボトルの粉砕機や段ボールの加工機など、様々な機械に取り付ける工業用の刃物を手掛けている。業績は好調で、2019年度の売上高は20億5200万円、経常利益は2億5800万円と、10年連続の増収増益を達成した。売り上げ規模は10年前の3倍以上に拡大している。

 業績アップの秘訣は徹底した「放任主義」にある。福田克則社長は若いころ、従業員の管理を強化すれば業績が伸びると考えていた。その信条に従って改革を進めるも成果は一向に得られなかった。苦悩する中、ある経営者との出会いが福田氏を変えた。

たばこのポイ捨て、欠勤が横行

 福田氏の前職はNECである。留学先の米ボストンカレッジを卒業し、1992年に当時、電機業界で飛ぶ鳥を落とす勢いだったNECに入社した。配属先はNECの屋台骨だった半導体部門で、需要を見極め、設備投資計画を立てる花形部署にいた。

 社内で誰もが一目置く精鋭ぞろいの中で「自分の限界を感じた」という福田氏は、5年間のNEC勤務を経て、97年に父や叔父が経営する家業の福田刃物工業に転職する。