自社開発したマイクロ波プラズマ処理装置の、プリント基板向け需要が急増している。2代目社長が立てた下請け脱却の目標を、次期社長が陣頭に立って達成した。

1台ずつ顧客に合わせたレシピを作成
<span class="fontSizeL">1台ずつ顧客に合わせたレシピを作成</span>
顧客と何度も打ち合わせをして、世界に1つだけのプラズマ処理装置が出来上がる。顧客満足のためには不可欠な作業だ
高い技術力で業績は安定している
●ニッシンの売上高推移
高い技術力で業績は安定している<br><span class="fontSizeXS">●ニッシンの売上高推移</span>

 毎年のように新機種が発表され、高機能化が進むスマートフォン。小型化も進み、ますます微細になっているのが、スマホ内部の半導体や電子部品、そしてそれらを搭載しているプリント基板だ。その基板の上に、深さ10マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの溝を掘って銅を流しこみ、線を作るなど微細な加工をするのが、電子機器メーカーのニッシンが独自開発したマイクロ波プラズマ処理装置で、機器の高機能化とともに需要を伸ばしている。同社の売上高は、2019年4月期に56億9000万円と、3年前の2.5倍まで拡大した。

5年かけて結果出し、社内の意識を変えた

 プラズマ処理は、表面加工、薄膜生成、洗浄などさまざまな用途で使われる。固体、液体、気体に次ぐ第4の状態といわれるプラズマは、気体を構成する分子が電離し、陽イオンと電子に分かれて活動する状態で、通常、気体の温度を数千度以上にしなければつくれない。しかし同社の装置は、高周波より周波数の高いマイクロ波を使うことによって、低温でのプラズマ処理を可能にした。高温に耐えられない樹脂やペットボトルなどを含む幅広い素材を対象にできる。

 開発したのは、07年に3代目社長に就任した竹内新氏。まだ30すぎだった00年代初め、会社にこもって開発を始めた。下請け仕事が売り上げの大半を占めていた当時、異質な研究に没頭する竹内氏は周りの社員から冷たい視線を感じていたという。しかし、約5年かけてマイクロ波プラズマ処理装置を完成させ、翌年量産化にめどをつけると周囲の見方は変わり、次第に多くの技術者らが積極的に協力するようになっていった。

 開発のきっかけは、竹内氏が20代後半のときに出会った、技術コンサルタントからのアドバイスだった。「半導体はプラズマ処理で微細な表面加工をしているけれど、それを搭載する側のプリント基板は微細加工ができていない。そこに需要があるのではないか」

 半導体用のプラズマ処理装置を使えば、プリント基板も加工することはできる。しかし半導体用の装置は、可燃性などがある危険なガスを用いる工程に備えて安全性を高く設計してあり、価格が非常に高い。一方、プリント基板の加工には危険なガスを使う必要がない。そこで竹内氏は、プリント基板加工に適した、比較的価格の安いプラズマ処理装置にニーズがあると判断、それが奏功した。

 同社のマイクロ波プラズマ処理装置が好評なもう一つの理由として、顧客の用途に合わせて1台1台のプラズマ処理装置の「レシピ」を丁寧につくることがある。顧客の依頼を受けると、まず本社にある実験機を使ってもらったうえで、使用するガスの種類や配合割合、使用電力の大きさや処理時間を調整して、最も効率的なレシピを探っていく。

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