海外製品が98%を占める国内繊維市場で、成長を続ける北陸の織物メーカー。1980年代から工場の情報・生産管理を進めて開発力を高め、商品企画に不可欠な地位を築いた。

繊維産業の一大産地、石川県・能登半島。のどかな町の一角でけたたましい音をあげながら生地を織り上げる合成繊維工場の中に、様々な色や風合いの6万点を超す生地サンプルがずらりと並んだ部屋がある。「テキスタイルスタジオ」と呼ばれる開発拠点。ここを訪れるのは、新商品開発を意気込む国内外のアパレルブランドの企画担当者だ。
サンプルを見比べながら商品の色や質感、機能のイメージを固め、工場が持つ膨大な生地の設計データをもとにコンピューターで完成イメージをシミュレーションする。案が決まれば、わずか2週間後には試作生地が織り上がるというスピード対応だ。
空洞化する国内繊維産業にあって合成繊維織物の製造を半世紀以上続け、今なお成長を続ける老舗織物メーカーが、丸井織物(石川県中能登町)だ。東レの下請け生産を主軸としながらも独自に開発力や提案力を磨き、アパレルブランドの商品企画を素材開発からサポートする「提案型」の委託生産へと事業を広げてきた。
創業は1956年。祖業は能登上布という伝統的な麻の手織り布や植物繊維を原料とするレーヨン生地の生産だったが、61年から石油を原料とする合成繊維織物の生産にシフトした。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1682文字 / 全文2278文字
-
【春割】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【春割/2カ月無料】お申し込みで
人気コラム、特集記事…すべて読み放題
ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「フロントランナー 創造の現場」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?