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知的障害を抱えるアーティストが描くデザインを、様々な製品に活用、販売する。福祉を経済に組み込んだ新しい取り組みで、知的障害者のイメージをも変えたいと意気込む

多種多様な企業に提供
アート作品をデータ化して提供するのが主な事業だが、工事現場の仮囲いやビール瓶のラベルなど、提供する企業は幅広い(写真=村田 和聡)

 「知的障害があるからこそ描ける世界があると信じている。僕自身も作品のファンの一人」。そう語るのは、ヘラルボニー(岩手県花巻市)の松田崇弥社長だ。ヘラルボニーは知的障害を抱えたアーティストたちが描いた2000点以上の絵画作品をデータバンク化。作品はアパレル製品のデザインに加え、東京・大手町の工事現場の仮囲いを彩ったり、岩手県・JR花巻駅の駅舎のラッピングアートとして人の目を楽しませたりと様々な場所で活用されている。

 絵は提携する14の福祉施設に通う知的障害者たちが描いている。「強烈なこだわりをもって描いており、いくつかの模様を繰り返し用いて画面上を埋め尽くすところに面白さがある」。松田氏は作品の特徴をこう表現する。

 マネタイズの方法は案件によって異なる。例えば岩手県のビール会社とコラボした時には、デザインの使用料をあらかじめ受け取りそれをヘラルボニーとアーティストで分け合う形だった。仮囲いアートでは囲いの施工管理から納品までをヘラルボニーが一手に担い、売上高の10%がアーティストの利益になる方法を採った。

作品を評価される舞台に

 松田氏は福祉を身近に感じる環境で育った。4歳離れた兄が自閉症だったからだ。いつかは福祉の仕事をと漠然と思っていたが、グラフィックデザイナーなど他の仕事にも興味を持ち、高校卒業後には東北芸術工科大学に進学。卒業後は広告代理店に就職し、イベント企画などを手掛けた。

 転機は2015年の夏。岩手県の実家に帰省すると、母から「知的障害者の人がすごい作品を描くんだって」と言われた。母に連れられて向かった「るんびにい美術館」は、知的障害や精神障害を抱えた作者のアートを数多く展示しており、松田氏は「こんな作風が存在していたのか」と衝撃を受けた。一方で障害を抱えた人が作品を描いても、地域の公民館などに飾られる程度で、商品になったとしてもクリアファイルかポストカードという扱いに、松田氏は疑問を感じた。