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医師の手技向上に役立つ、心臓血管手術の高度訓練用シミュレーターを開発。これまで難しかった実践的な練習環境が実現し、「神の手」の継承にも期待がかかる。

心臓の鼓動を再現した環境下で、医師が手技を磨く
特殊ゴムが拍動する中、血管を模した管で縫合の練習をする。指先にかかる負荷を測定し、手技のデータ化も目指す

 心臓の鼓動を再現した、不規則に動く黄色い物体。その表面に配置された直径2mmほどの管を、繊細な手技で縫い合わせていく。物体が想定外の動きをする中、縫合を何度も繰り返し、医師が手術のための技術を磨く。

 これは拍動したままの心臓手術を模擬体験できるシミュレーター「SupeR BEAT(スーパービート)」。イービーエム(EBM)が豊田合成と共同開発し、2019年秋に発売した。豊田合成が開発した、電気のオン・オフで伸縮する特殊なゴム「e-Rubber」が内部で動き、拍動を再現している。

 EBMの朴栄光社長は「心臓の繊細な動きをリアルに再現できた」と胸を張る。不整脈による複雑な拍動など、手術の最中に起こり得る心臓の動きはソフトウエアで生成する。従来のシミュレーターでは難しかった、様々な拍動の組み合わせが再現できるので、実践的な練習機会の少ない心臓血管外科医師の技術向上が図れる。器具の持ち手にもe-Rubberを使って指先にかかる負荷を計測・分析、データとして可視化することで、「神の手」と呼ばれる熟練医師の技術を後進に伝えるツールとしても期待されている。