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会社員なら1度は失敗したことがある固定電話の対応。聞き間違いや伝え忘れなどミスが起きやすい。そんな悩みをIT(情報技術)で解決するサービスが中小企業に広がっている。

PCに電話相手が表示される
顧客の属性や対応履歴が着信と同時に表示され、新人でも心の準備ができる。迷惑電話を検知する機能も備えている

 「社長さん、いる?」。「どちら様でしょうか」。「君は新人か? 電話を替わってくれ」。「恐縮ですが、ご用件は……」。「いいから替われ!」。「社長、お電話が……」。「誰? 名前くらい聞いて!」

 昔から、多くの新入社員が経験したであろう洗礼だ。ただ、携帯電話による知人同士の会話しか知らない若い世代にはとても理不尽に感じる。シンカが2019年12月に実施した約1000人へのアンケートによると、「固定電話をとるのはストレス」との回答は若手(20~34歳)に限ると約7割にも上った。会社の電話に出ようとすると極度の恐怖やストレスを感じる「固定電話恐怖症」は社会問題になりつつある。

 また電話で受発注やクレーム対応など重要な業務を行うと、ミスをしやすい。同社の調査によると、電話で「言った、言わない」のトラブルを経験した割合は42.1%。ストレスを抱えて電話に出れば、聞き間違いや思い込みはもっと増えるかもしれない。

 シンカは、こうした電話でのトラブルをなくし、業務をスムーズに進めるためのクラウドサービス「カイクラ」を提供している。「会話クラウド」の略で、電話の着信があると、顧客情報や対応履歴がパソコンの画面に自動で表示される。社名や部署、氏名、過去の取引、自社の担当者など基本的な情報のほか、自動車ディーラーなら納車日など、業種や会社特有の項目も設定できる。会話内容はAI(人工知能)が自動で文章化。テキスト検索によって、記憶違いやクレームの見落としを減らせる。

 電話と顧客情報を結びつけるサービスは、コールセンターなどに普及しているCTI(電話統合システム)があるが、自社にサーバーなどを置くため導入費用が数十万~数百万円かかる。シンカは、これをクラウドサービスにすることで初期費用13万円、1ライセンス(電話番号2つ)当たり月額使用料2万円から使えるようにした。

「固定電話テック」の需要が伸びている
●シンカの売上高
注:19年12月期は速報ベース

 14年のサービス開始から約5年で、1500社、2100拠点が導入を決めた。不動産関係や自動車ディーラー、士業、冠婚葬祭業など業種は幅広い。「購買頻度は比較的低いが、商品やサービスの単価が高い業種は顧客との音声コミュニケーションを重視しており、導入に結びつきやすい」と江尻高宏社長は手応えを語る。

 重宝されている機能の1つが、携帯電話へのSMS(ショートメッセージ)送信機能だ。カイクラを導入した不動産ベンチャーのS-FIT(東京・港)は、賃貸物件の入居者にSMSで契約更新に関する督促情報を送っている。電話に出ない相手に必要な情報を送れる上、「入居者からの折り返し電話に履歴が表示されるので、担当者が出ることが容易になって、電話回数を減らすことができた」と、同社プロパティマネジメント事業部管理課の横山大介氏は効果を語る。

日経ビジネス2020年3月16日号 98~99ページより目次