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手間暇のかかるタクシーの配車をクラウド型システムで効率化した。経営危機にあえぐ地方のタクシー会社の救世主として広がりを見せる。

全国どこでも配車
徳島市内のコールセンターで日本全国の配車注文を取り次いでいる。吉野川タクシーでドライバーをしていたころの近藤社長(右下)

 「はい、いつものところに1台ですね」。徳島市内にあるビルの一室。何ということはないタクシー配車の風景だが、配車されたのは実は静岡県だ。ここは電脳交通のコールセンター。愛媛県や広島県など他県の多くのタクシー会社のコールセンターを兼ねている。

 経営が苦しい地方の中小タクシー会社にとって、低コストで配車業務を請け負ってくれる電脳交通は救世主だ。24時間対応の人件費などコスト削減が可能なだけでなく、顧客満足度の向上にもつながるからだ。

 デジタル化で後れを取る地方のタクシー会社の多くは、いまだに電話で配車注文を受け、無線で近くの車を探し向かわせている。電脳交通のシステムは車載タブレットに位置情報アプリを組み込んでおり、瞬時に最寄りのタクシーを探し出し最適配車する。運転手にも即座に目的地までの道筋が表示される。コールセンターの人員は画面を瞬時に切り替えれば、1人で同時に何社も配車業務ができる。

メジャーリーグ諦め、タクシーへ

 電脳交通の近藤洋祐社長は高校卒業後、大リーグを目指し米国に野球留学した。だが投手生命に関わる大けがを負って帰国。24歳で野球への未練を断って選んだ道が、家業のタクシー「吉野川タクシー」への入社だった。

近藤社長は「野球で失敗続きだったのでプライドもなく何でもトライした」と振り返る

 当時、稼働9台という徳島市で最も小さな法人タクシーだった吉野川。赤字続きで債務超過、赤字は祖父母の年金で埋めて事務の母は給与なしという惨状だった。そんな会社でドライバーを始めた姿を見て、結婚を真剣に考えていた彼女は音信不通になった。