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高齢化社会で問題化する「買い物難民」に、独自開発のロボットで挑む。ハードとソフト、こだわるのは「柔らかさ」だ。

階段を自動で昇降
柔らかいゴム素材のベルトが段差を捉え、衝撃も吸収。ゴミ出しや買い物の荷物などを運ぶ。人との共生を意識して作られた(写真=共同通信)

 2019年12月、神奈川県藤沢市の市営団地「渋谷ケ原住宅」で、ある実証実験が行われた。団地の階段をゆっくりと上り下りするのは人ではなく“ソフトロボット”と呼ばれる機械。2階の住人のゴミを、ロボットが階段を下りて1階のゴミ捨て場まで運ぶのだ。

 渋谷ケ原住宅は全部で5棟あり、うち2棟は1960年代築と古い。5棟は3~4階建てだが、いずれもエレベーターはない。住人の多くは高齢者で、身体の衰えとともにゴミ出しや買い出しに悩む人が増えている。実験に立ち会った市営住宅自治会長の古屋君枝さん(75)は「こんなロボットがあれば、すごく助かる」と話す。

 この実験を地元自治体の藤沢市とともに実施したのは、ロボットを開発する慶応義塾大発ベンチャーのアメーバエナジー(藤沢市、青野真士社長)だ。ロボットは2リットルのペットボトル3本分、6kgまでの荷物を運ぶことができ、住人が買ったものを上階まで運ぶといった利用も想定している。移動速度は時速1kmとゆっくりしているが、人の歩行速度に近い3~4kmまで速めるなどして、21年にはサービス開始につなげたい考えだ。

柔らかな体と頭脳

 ソフトロボットの特徴は、まずは通常のロボットのイメージとは異なる柔らかなボディーだ。アメーバエナジーは「柔らかい頭脳」を持つことが特徴の、新しいタイプのロボットを開発する。

 介護を中心に高齢者向けのロボット開発は多くの企業が進めている。階段の昇降や荷物の積み下ろしなどは一見簡単に見える作業だが、自動化となるとハードルは高い。複数のカメラやセンサーを搭載して高機能なロボットを作ることもできるが、ハイスペックな機械では事業化が難しい。そこでアメーバエナジーは、応用範囲が広く、使いやすい価格で高性能なソフトロボットを開発し、社会問題の解決に挑む。