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機能性表示食品に使用される「GABA」など、健康食品の素材を開発し、販売する。卵の研究によって次々と食品素材を開発して事業を拡大。長年の夢だった創薬事業に挑戦する。

食品素材を研究
人間に有用な成分を見つけるために研究に注力する(左)。開発した素材は自社の製品だけでなく、他社の食品にも展開している(右上)

 「ストレスを低減する」「睡眠の質を向上」──。スーパーやコンビニの棚には、こうしたキャッチコピーの菓子や飲料が数多く並ぶ。これらは「機能性表示食品」と呼ばれる商品だ。2015年から導入された新たな食品表示制度により、こうした健康食品は存在感を増している。

 例えば、冒頭のキャッチコピーを表示した食品に含まれるのが「GABA(ギャバ)」という成分。このGABAを開発し、食品素材として食品メーカーに販売するのが京都市のベンチャー企業、ファーマフーズだ。国内で機能性表示食品として届け出られているGABA含有商品は約250件。そのうち約8割が同社の販売する「ファーマギャバ」を食品素材として使用している。

 健康食品市場の成長をけん引する機能性表示食品だが、消費者庁が許可する特定保健用食品(トクホ)と違い、あくまでも事業者による届け出制。届け出件数は現在2500件を超えるものの、同庁によると、これまで200件超の届け出が取り下げられている。科学的根拠が不十分な商品では、景品表示法違反に当たるとされたケースもある。

研究開発が起業の原点

「卵からヒナがかえることほど不思議なものはない」と語る金武祚社長

 一方、ファーマフーズが素材を提供した201件の商品のうち、取り下げられたものはゼロ。「我々は研究や論文作成を自前で行い、査読付きで発表している」(金武祚社長)と自信を見せる。同社がこのように研究開発に力を入れるのにはワケがある。いつか創薬事業に進出したいという、金社長の研究者としての思いがあるからだ。

 京都大学で農学博士号を取得した金社長。その後は米カリフォルニア大学にポスドク(博士研究員)として留学し、研究者としての道を歩んでいたが、38歳の時に食品素材メーカーに研究職として迎えられた。

 ところが、常務取締役となって決裁や会議に追われる日々を過ごすうち、「自分は研究者として社会の役に立ちたかったはず」と、仕事に対する違和感が募っていった。50歳を目前にした1997年に一念発起。再び研究者として生きる道を求めて会社を辞めた。

 研究者としてどうやって生きていくか。確たる当てはなかったが、とにかく米国に渡った。ある日、現地のバイオベンチャーが投資家相手に事業をプレゼンするミーティングに参加した。研究は大学や専門機関でするものと思い込んでいた金社長にとって、自ら研究に取り組み、お金を集めようとするベンチャー企業を目の当たりにしたことは転機となった。「研究自体が投資の対象になるのか。あれぐらいならどこかに属さずとも自分にもできる」。そう考えて帰国し、すぐに会社を立ち上げた。

 「誰もが知っているもので、誰もやっていない研究をしよう」──。目を付けたのが「卵」。鶏卵抗体の研究をやろうと決めた。幼い頃にニワトリを飼育し、「なぜ卵がヒナになるのか」という疑問を持ったことが研究者としての原体験にあった。京都には養鶏関連の企業が多くあったことも理由の一つだった。