サービス業に特化した実践的な人材育成研修を安価に提供する仕組みで、成長を続ける。マクドナルドやユニクロで培った「人づくり」のノウハウで、中小サービス業を支える。

外食などのサービス業では、深刻な人手不足が続いている。厚生労働省の調査では、大卒の社員が就職後3年以内に離職する割合は、全産業の平均が約3割なのに対し、飲食・宿泊業では約5割に達する。やる気を持って、息長く活躍してくれる働き手は、企業にとってはまさに金の卵だ。
こうした人材の育成を支援して成長を続けているのが、ホスピタリティ&グローイング・ジャパン(H&G、東京・新宿)だ。2012年に会社を立ち上げた有本均社長は、社員やアルバイトの育成ノウハウで定評がある日本マクドナルドホールディングスの出身で、社内の教育機関「ハンバーガー大学」の元学長。その経験を基に、「国内で唯一」(有本社長)のサービス業に特化した定額制の研修サービスを展開する。外食を中心に約1200社がサービスを利用しており、延べ30万人以上が受講。19年9月期の売上高は約10億円に達する。
「離職の大きな原因は、日々の業務をこなすことで精いっぱいで、成長の手応えを感じられないことにある」と有本社長は話す。会員企業の中には、離職率が数分の1に下がる例もある。
同時中継で低価格を実現
H&Gの独自の強みは2つある。1つは、極めて実践的な講義内容だ。クレームへの対処法や社員同士のコミュニケーションの図り方など、アルバイト向けから経営幹部向けまでの100種類の講座を展開。その多くは、ロールプレイングやワークショップを中心とした、実際の現場で自ら考え実践できるようにすることを目的にした内容だ。教える側には高い技量が求められるため、名門ホテルや大手小売りの人材育成の経験者を採用し、講師に据えている。
もう1つの強みは、利用しやすい価格だ。H&Gは、東京・大阪など6つの主要都市に教室を持ち、1回3時間の講座を月間約90コマ実施する。会員企業は月額7万円(税別)を支払えば、すべての講座を1コマ5人まで受講させられる。「会員のほとんどは中小企業。人材育成の大切さは分かっていても、そこに投資する余力がない会社が多い」(有本社長)
Powered by リゾーム?